第31話 デーティング (重なりゆく未来)

 翌日、組織の者たちに八神の事を話す礼子。

「面白い。が、出来すぎだろう。そんな話、すぐに信じろと言ってもだな」

木下が当然の反応をする。

「そうね、当然そう思うよね。でも本当の事」

「俺たちが直接会えるか」

礼子のもう一人の教育係兼ボディーガード、八木が尋ねる。

「その機会は作るつもりよ」

「問題はどこで会うかだな。それも不自然では無い形で」

「それはもう考えがある。木下、八木。二人をまず八神さんに合わせる。二人ともこの組織の言わば幹部。そして私の護衛でもある。父の付けた」

「なるほど。お父上との会食時、二人が会っている事は周知の事だ。次に会う時は俺たちが同席しても不自然では無いな」

「もう一つ。八神さんと私、お付き合いをすることにしたわ。機会があればいつ会っても不自然では無いでしょ」

少し頬を赤らめ話す礼子を察する木下と八木。

「そういうことなら早く会った方が良いな」

「当然ね。組織として動くにはまだ時期では無いけれど、その時のためにもお互いの情報は共有しておかないとね」

頷く幹部達。


「よう、八神。デートは順調にいったようだな」

後藤が冷やかすように言う。

「ああ、情報通り。いや、それ以上の女性だよ。彼女は」

「これで残ったピースは後2つか」

「最後のピースが最も重要なピースだ」

皆、頷く。

「清美さん。二宮礼子を”見て”どうだった」

海老名が尋ねる。

「あなたたち同様、年齢と見た目だけで判断する事だけは止めるべきね」

「合格って事か」

「隊長の言った通り、情報以上よ。組織は彼女を軸に機能しているわ。彼女のリーダーシップは本物よ。それにカリスマ性もある」

「俺たちのプラスにはなるが、マイナスになる要素は無いと理解して良いか?」

「敢えて言えば、今のところ。と言うところかしら」

「清美さんは不安要素があると?」

「組織が思った以上に大きい事かしら」

「なるほど、世帯が大きければ大きいほど末端まで把握するのは。か」

「彼女と幹部達には問題なくても、地下組織である以上メンバー全員に周知、徹底は望めない。軍のように厳格な規律がある訳では無いから」

「いずれ彼女の組織は明るみに出す。その時点である程度メンバーは淘汰されるだろうな。それは構想に組み込んである。時期と手順を見誤らなければ問題は解消される」

八神の発言に海老名が問う。

「楽観的に事を考えるな。判ってるとは思うが」

「ああ。近いうちに組織の幹部達と会う事になる」

「情報の共有は重要だからな」

後藤が確認するように言う。

「で、婚約発表はいつ頃?」

井上の発言に皆ニヤニヤと八神を見つめる。

顔を赤らめ真剣に考える八神が別人のようで、初めて年相応に見えた。

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