第28話 アンダーグラウンド オーガナイゼーション (運命の出会い)
現政府に対する反勢力は地下でその勢力を伸ばしていた。
「能力者の人権はまだ十分とは言えない。たしかに一部では政府もその価値を認めているかもしれない。特務警察特殊部隊がその一例として取り上げられているけど、他はどう?能力者で無い人々はまだまだ能力者を毛嫌いしている人が多い。その事実が公にされる事はまだ無い。能力者が未だにそれを隠して生活している事が象徴しているわ。私は事実に目を背けている現政府に疑問符を投げかけているだけ。なのに何故地下に潜って活動しなければいけないのかしら」
二宮礼子がいつもの不満を又、声にする。
「リーダーの思いは支援者に十分伝わっています。だからこそ我々の活動資金となっている」
「判っているわ。だからこそ、その効果。いえ、成果を示さなければ」
それはこの数年、反勢力に賛同する活動家がメディア等で述べてきている。
「面白い情報がありますよ。政府は能力者の特殊部隊を隠し持っているみたいです。その隊長がかなり若いと。リーダーと同世代みたいです」
「どれだけ若かろうと我々は色眼鏡で見、判断する事は無い。我々のリーダーがそれを雄弁に語っている。だが、それ自体変化をもたらす可能性を秘めている」
メンバーの発言にサブリーダーと目される男が言う。
「自然な形で一度会って、語り合いたいものだな」
その言葉に、礼子は何かを予感していたのかもしれない。
それは突然訪れた。
「優一、今度現政権幹事長の二宮さんご家族と会食をする事になった。その娘さんがお前と近い年齢らしい。お前なら話し相手になるだろう。同席出来る様、予定をしておけ」
源師団長が珍しく八神優一Z班隊長に注文を付ける。
「?判りました。今、政府の人間と繋がりを持つメリットはあまり無いかと」
「私には無いが、お前には今後必要となるだろうに」
意思を閉じ”場”を纏っていた八神には想定外の指示だった。
「源師団長…、親父には俺のやりたい事が判っているのか?」
「何の話だ?私は会食に同行せよと、言っているだけだ」
「…了解致しました、師団長」
八神自身、政府関係者との繋がりは欲しいと思っていたところだ、渡りに船ではある。
断る理由は皆無、むしろ歓迎したい事だった。
「年がいくら近くても、相手がどのレベルの話し相手かが重要なのだが、果たして…」
八神の予想は大きく外れた。
幹事長の娘がただ政治家の娘という訳ではなく、自分の思想を持っていた事。
優一と渡り合える知識を有していた事。
そして容姿もかなりのレベルであった事だ。
短い会食の時間でも、それは認識出来た。
政治的な話に同席は許されず、礼子と八神は席を外した。
八神の先手を取り、礼子からのジャブから始まった。
「父から聞くところによると、優秀な方で部隊の隊長をされているとか」
「源師団長のおかげですよ。自分には不相応と体感しています」
「もう一つ伺っても構わないかしら?源師団長は現政府に反旗を掲げていると噂のある方です。それが何故父と会食を?」
「それは私にする質問では無いように思いますが」
「フフ、あなた。見かけだけでは無さそうね。今度、私事でご一緒致しません?」
組織からの情報にあった特殊部隊と、八神を重ね合わせていた。
「ご婦人からの、特にあなたのように聡明且つ、魅力的なご婦人、失礼。そう表現する年でもありませんね、訂正します。魅力的な方のお誘いを断る男は少ないかと」
「では、こちらから連絡差し上げます。連絡先を教えて頂けるかしら」
「失礼ながら仕事柄、私からそれをお伝え出来かねます。よろしければ私から連絡する事は可能でしょうか」
「ふふっ、そういった所も合格ね。良いわ、これが私の直通よ」
携帯端末の自局情報を数秒見せる礼子。
「記憶しました。お互い都合が合えば良いですね」
「お待ちしております。後、事前にお伝えしますがあなたの事、私独自のルートで調べされて頂きます。よろしい?」
「構いません」
お互い、何か引き合うものを感じる二人だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます