第22話 コミュニティー (高揚する八神)

 特務警察特殊部隊の組織犯罪捜査課、丸山、浅野と一般警察署員の山口、丹羽のチームが捜査していた薬物海外流出について、情報が入ってきた。

大量の薬物が消えメンツを潰された事と、あの時に死んだテレポーターの女がNo,2の男の息子が一番気に入っていた愛人らしく、手がかりを得るため手元に残った薬物で外国から優秀な能力者を得ようとばらまいたようだった。

薬物の有効時間が短い事と、成分を分析しても二度と生成出来無い事、しかも開発途中の粗悪品だった事がバレ、その男は逆に海外の組織によって抹殺されたとの事だ。

薬物を生成した本人は、あの事件で井上が消してしまった事が幸いした。

「たまにはお前も役に立つじゃ無い」

「ホント、たまというか、たまたまというか」

「まだ安心は出来ん。国家単位であの薬を分析すれば生成が可能になるかもしれん」

「だな。いっそ全部消すか?」

「物理的に無理だな。少量と言っても、売にならない程度の質だがそこそこ量はあるようだ。手間をかければ俺たちなら可能だが、そんな事をしているほど暇じゃ無い。生成出来たらその時はその時だ。逆利用することも出来るさ」

「おお、すでに計画に組み込み済みですか。さすが天才八神隊長」

「いや、ワンステップ飛ばせると言ったところだ。しかし問題もある」

「例の軍内部におわします敵対勢力がその薬を持っている可能性だな」

「ああ、改良してもっと効能を持続的、有効的にしているかもしれん。清美さんの仕事を少し早めるしか無いな。井上、ちょっと付き合えるか」

「何だ」

「マリーさんに会いに行く」

井上が満面の笑みで答える。

「喜んで!」


 アポイントメントを取り、八神と井上は清美とマリーが共同生活をしている家に行く。

以前は何かの施設だったそこは意外と敷地も広大で庭もかなり広く、綺麗に管理されていた。

同性愛者達のシェアハウスのような所だとは聞いていたが、1階部分は日用雑貨、食料品、衣料品店舗、料理店や病院まである。

およそ生活に必要な全てが揃っていた。

庭も開放され菜園、果樹園も有り環境のせいか違和感は全くなく、地域住民にも解放され交流の場になっていた。

エントランスも有り、住人の交流や来客をもてなす事も出来る様になっていた。

その入り口で清美とマリーが二人を迎えに出てきていた。

「ようこそおいで下さいました」

マリーが例の仕草で挨拶をする。

「又お会い出来て嬉しいです」

八神が挨拶する前に井上が満面の笑みで最敬礼をする。

「驚かれたでしょう?八神隊長」

今度は清美が嬉しそうに話し出す。

「これは」

「そう。あなたの描くコミュニティーを模してみました。マリーの協力で」

「確かに私の思考したエッセンスが色濃く出ている。能力者と一般人の比率は?ここの住人や近隣住人の反応は?」

珍しく八神が高揚している。

「比率は7対3で一般人を多くしています。反応は良好です、期待以上に」

「問題は無いのか?」

「大きな問題は今のところありません」

「こういったコミュニティーの問題に大小は関係無い。小さな問題も破綻に繋がる」

「心得ております。…ご心配は無用ですよ」

「開設して期間はどのくらい経つ」

「一年ちょっとです」

「うーむ、まだ色々と確認しておきたいが」

「今日はマリーさんに話を聞きに来たんだろ?なにをそんなに盛り上がっているんだ?判断するにはもっと長期的スパンがいるだろ。らしくないぞ」

「いや、その通りだな、すまん。イメージが形を成している感覚に戸惑ってしまった」

「とりあえずお二人の部屋に行こう」

井上の不満はそこにあったようだ。

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