第21話 ディストールテッド インフォメーション (意図して歪められた情報)

 田中秘書官とマリーの事は気掛かりではあったが、情報部からそれ以上に危惧しなければならない2つの情報がもたらされ、そちらに注力せざるを得ない八神だった。

一つは以前処理に当たった一般人を一時的に能力者にする薬物が微量ながら外国に流れている件。

二つ目は諸外国、特に大国と言われる国々に於いて、能力者の代わりを果たす機械が開発されたようだとの情報だった。

前者は犯罪組織のNo,2の息子が絡んでいるようだった。

そちらは特務警察特殊部隊の組織犯罪捜査課、丸山、浅野と一般警察署員の山口、丹羽のチームがすでに動いていた。

八神と井上を調べようとていた4人だ。

特務警察特殊部隊、組織犯罪捜査課員丸山の能力は基本テレパスだが特殊なものだった。

対象にテレパスを送ると、能力者なら対象者の意識にかかわらず様々な情報が送り返される。

一般人には無効だが、対能力者に於いては特務警察官として有効な能力だ。

別件で捜査中に薬物の情報を得、捜査を始めたようだった。

八神はそちらの方はしばらく彼等に任せることにした。

二つ目の情報の方が彼らZ班にとって、大きな問題との判断からだ。

開発された機械がどのような、そしてどの程度有効な物かの情報は全くない。

情報班も偶然入手した情報で詳細情報の入手に動いているが、かなり難航しているようだった。

情報が無ければいくら八神が優秀な指揮官であっても、作戦や対処法は立てられない。

まずは詳しい情報を独自に収集することにした。

「まずは石川経由で調べてみるか。ある程度進展したら清美さんに助力してもらうか」

すぐにZ班のメンバーとその事を共有し各自動いてもらう。

海老名は以前戦場に海外派遣されている時の仲間との伝手があるようだった。

後藤は犯罪組織に関わっている情報屋を持っているらしい。

裏社会の人間は、案外そういった各国が秘密にしたい情報を入手するルートを持っている事がある。

当然八神は軍、情報部特殊班の動きに注目した。

それとなくアドバイスをしたりもした。

ひと月ほどで、ある程度の情報が入手出来た。

それによるとある程度の範囲にいる能力者の能力発動を検知し、能力者の脳に発動を妨害する事の出来る電磁波を発生させる機械。

能力者の能力を、ある程度増幅する事の出来る装置という事だった。

能力センサーや電磁波の有効範囲等は不明のまま。

増幅器の増幅程度も不明。

まだ実用には至っていないとの情報もある。

「能力者不足を機械で補うつもりだろうが、実戦投入はまだのようだな」

「隊長のおっしゃる通りのようですね」

石川が自分の得た情報とも照らし合わせ意見を言う。

「能力発動時の脳の働きなど、研究はかなり進んでいるようだぞ」

海老名が言う。

「能力のジャミングについては、実戦投入が近いかもしれんな」

八神の意見に皆頷く。

「俺がその機械のモルモットになれば面白いかもな。無くした記憶に何が影響があるかも」

「いや、それはなるべくしたくない。…どうも能力者のデータは俺たちの海外派遣時に採取したものらしい。井上のデータがどのようにとられているかはフィードバックが無いそうだ」

「ほう、俺たちのデータね」

後藤がニヤニヤと笑っている。

「何かしたのか」

「まあな。だとしたら案外心配は無用かもしれんぞ」

「能力者に感というのも変だが、お前の感は鋭いからな」

「用心深いと、いや、思慮深いと言ってくれ」

「ずる賢いとか」

井上の一言に後藤が食べていた菓子を井上にぶつける。

それを切っ掛けにいろんなものが井上に向けて投げられる。

「ちょ、ちょっと待った。ずるは撤回。後藤さんは賢い人です」

レクリエーションタイムは終わる。

「あ、それと海外に漏れた井上さんの事ですが、”反応”のことは全く知られておらず、爆発的なPKとなっています。井上さんに加わる攻撃に比例して大きくなる」

石川の情報に八神が

「その情報を得られた事は大きいかもしれないな」

「井上の”反応”は重要機密だからな」

「それだけでは無い、俺の計画に別の可能性が出てきた」

「それは良い目か、悪い目か?まあ、サイコロの振り手の問題もあるわな」

「清美さんには、危険領域に踏み込んでもらう必要があるな」

そう呟くと、そのまま黙って考え込む八神。

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