第15話 アルティメット チーム (最強部隊の誕生)

 見知った隊員以外の人物に対し反射的に”無効化”を発動する石川。

「あなたの調べた件は私の持つ情報と合わせ、私から八神大佐に報告しておきます。…これが私の能力。あなた方以外には知られていないわ」

「何が何だか。テレパスらしいが石川は瞬間的に無効化を発動したのは判った。それで”読んだ”?」

海老名が尋ねる。

「私は一瞬で本人も気づいていない、又は覚えていない深層記憶まで読む事が出来る。テレパス監視部にも気づかれていない」

「確かに記録上は”能力無し”と、なっていた。それほどの能力、良く気づかれず通せたな」

と八神が言う。

「幼い時この能力に目覚めて、最初にすべき事は両親に絶対知られない事だったわ。普通の人間だった両親は能力者を毛嫌いしていたのが判ったから」

「じゃあ、今度は嫌がらせ人事じゃ無かったって事か?待てよ、普通の人間をこの班に転属って、やっぱ嫌がらせ?」

「辞令を出した人はそう思っているでしょうね。深層意識を読むだけでは無く、書き込む事も出来るのよ。私が八神隊長を進級させ、秘書官としての転属を操作したの。八神少尉のお役に立てると言った意味がお判りになって?」

井上に答えるように言う。

「その若さで中尉という階級も能力で?」

「同期の連中は女としての武器を最大限活用したと思っているわ」

「どうやら見かけよりタフなようだね」

海老名が感心したように言う。

1人石川が警戒しているようだ。

「心配しなくても大丈夫よ、石川さん。あなたがもう、この班以外に居る気が無い事は判っている。本国にも、もう連絡していない事も」

「じゃあ、もう隠す事も無いか。僕はZ班について探るために送られたスパイでした」

「隠すも何も、皆判っていたさ。俺たちはそれほどぼんくらじゃ無い」

「そうね。その気になればあなたは瞬殺されていたわ」

「田中さんの能力からして真実味が高いのだけれど、なんか複雑だな。瞬殺って」

「Z班隊員の、隠している能力を知れば判るわよ。絶対話さないけど」

「判っているね。中尉の階級も、テレパスだけでは無いようだな」

「俺の事、何か判った事があったら教えてくれ」

井上が真面目な顔で尋ねる。

「ごめんなさい。あなたの”反応”の事は知っているわ。だからあなたには使えない。でも、いつになるかは判らないけど、無事に読めるようになる時が来たら読んであげるわ」

「そうだよな、こっちこそごめん。それと、八神大佐ってのやめない?これまで通り隊長か八神隊長で行こうよ」

「ふふふ、本当にフレンドリーな部隊ね。私も堅苦しいのはやめるわ。ただ始めに言っておくけど、私は同性愛者よ。男性に恋愛感情を持てないし、あなた方にもそんな感情を持って欲しくない。部隊の一員として接して欲しい」

「男性に恋愛感情を持てないのも、その能力が?」

「それは否定しない。でも、それだけじゃ無い。初めて恋愛感情に気づいた相手が女性で能力者だった」

「能力者?」

「そうよ。彼女」

Z班のメンバーにどう見ても16、7才の美少女の姿が送られる。

「彼女の能力は若返りの様なもの。それでも私より2つ年上よ」

「あんたの恋愛話はもういい。一つ確認したい。その能力で井上はともかく、俺たちの記憶に何もしていないという保証は?」

海老名が真剣な顔で問う。

「あなたがそういう疑問を持つ事が出来る。と言う事で理解して頂きたいけど、無理があるかもね」

「我々には敵が多い。それを知っていてここに望んで来たのは?」

「私にとって、世界で一番安全な所だから。それと彼女のためにも八神隊長の力になりたい」

「自然な理由だな。まあ信じよう」

「私からも一つ確認したい。私とこの部隊の事はどこで?」

「組対の刑事と特務警察に目を付けられたでしょう。彼等から八神隊長と井上副長の事を。そして彼等の記憶から追跡し、見つけた隊長をはめた犯人からZ班の事を」

「犯人、安井少補か」

「さすが八神隊長。ご存じでしたか」

「確証は何も得られなかったが消去法で残った人物だ」

「相手が判ればやりようもある。が、組対の刑事と特務警察に知られたのは面倒かも」

後藤の意見に

「その件はもう済ませてきました。彼等のあなた方に関する記憶は消去済みです」

「特務警察にテレパスを使った?良くバレないな」

「一瞬でと言ったはずよ、機器で計ろうと、残存思念を見ようと、誤差の範囲内程度よ。これまでも、これからも私の能力をあなた方以外に知るものはいない」

「これで欲しかったピースがほぼ揃った。後藤の能力に田中の能力は相性が良い」

「なるほど、俺の能力はスキャンが主だ。そこに敵の思考がプラスされれば。この部隊、かなりやばくなるぞ」

「八神隊長のお力になれると理解してくれたかしら」

「実戦の場に同行しない、する必要が無い理由も判ったな」

「…井上さんって本当に八神隊長の思考に似ているのね」

「八神隊長を読んだのか」

「それは無理。隊長はいつも自分を”場”で包んでいるから」

「海老名と後藤からか。え、いつもって24時間?」

「そう、24時間365日。人の域を超えているわね」

「超人八神!ってか」

自分を褒められたかのように自慢げに言う自身に気付き目線をそらす井上。

「井上さん、実は照れ屋さん?」

「惚れた?」

「無理!」

「瞬殺された」

「ここに来て本当驚いたわ。どこかの芸能プロダクションに来たのかと錯覚したわ。この隊の存在が明るみに出たら、別の意味でも大騒ぎになるわね」

「俺たちも新しく来た美人マネージャーかと」

「新人モデルでは無く、マネージャー?でも、美人って評価してくれたから許してあげるわ」

すでにZ班に溶け込んだようだ。

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