第5話 ニューチーム (その3 愉快な仲間)
石川が来てから1年が過ぎていた。
その間、Z班の出動は13回。
これまでより若干多い出動回数らしい。
すでにZ班のフォーメーションは定着した。
攻撃パターンが定着する事は本来良くない事なのだが、このメンバーならではの無敵の布陣で隙が無いため、自然と定着した感があった。
個々の特化された能力と、自己防衛の隠し能力あってこその布陣だ。
「出動要請だ。今回は中南米あたりらしい。一旦アメリカに行く。情報を収集した後現場の近くの基地に行く」
特殊班の移動はさほど時間を必要としない。
テレポート能力者が現場に一番近い施設にメンバーを送り、そこから状況に合った乗り物で移動する。
現場に直接転移しないのは万が一、テレポートが干渉された場合、着地先に物質があると転移した者がその物体と一体化してしまう危険があるからだ。
まずアメリカの基地で情報を確認する。
基地の責任者や担当者に挨拶するわけでも無く、テレポートエリアの室内に置かれた端末を確認すると、現場の近くの基地へとすぐにテレポートする。
テレポートエリアから出ると、彼等を運ぶ為、同行していたテレポーターはすぐに自分だけテレポートし帰った。
その部屋には彼等以外誰もいない。
アメリカでの基地でもそうだが、Z班に関わる事を避けたいようだ。
Z班のメンバーは各自無線のインカムをセットする。
『到着しました』
隊長の八神が連絡を入れる。
『早速始めてくれ』
『了解』
それだけ答えると、八神は隊員の方を向き頷く。
後藤がいれば通信インカムなど不要なのだが行動時、身につける事が決められている。
ただの通信用では無い。
各自のフィジカル情報等も収集している。
「行くよ」
後藤のスキャンが始まる。
瞬時に現場の状況を隊員が共有する。
全員位置についたようだ。
攻撃対象の施設を八神が”場”で包み込む。
監視システムを海老名が具現化した武器で全て破壊する。
石川が攻撃対象の施設内にいる能力者の能力を無効化する。
次に海老名が対象の施設内にいる敵を具現化した武器で処理をする。
井上が今回の目的である情報を入手し戻れば作戦は終了なのだが、トラップがあった。
施設の首領以外の者が司令室に入ると自動装置が作動し攻撃をするようになっていた。
井上が”反応”し、施設の3分の1が消滅した。
続けて爆発が起こったように見えた次の瞬間、黒いものが広がってすぐに消えた。
残りの施設も消滅した。
「後藤、お前わざと情報送らなかったな」
副隊長井上だ。
トラップの事を言っているのだろう。
「上からの指示なんで、すまんな。迎えに行くから許せ」
「まあ良いさ、よくある事だ」
「ホント、よくある事だ」
海老名も続けて言う。
「このところ、多くないですか」
石川だ。
「撤収する」
これ以上の余計な会話は不要、と言うかように八神から指示が来る。
基地のテレポートエリアに戻ると、タイミング良くテレポーターが現れる。
「今回の施設は何の施設だったか、聞いているか」
井上がテレポーターに聞くが無言だ。
「まあ、我々は指示に従うだけだ。敵が何だろうと、誰だろうとね」
聞かなくとも、後藤のスキャンで大体の想像は皆ついている。
彼等が出向くほどの現場でも無い、とも。
班本部に着くと、井上が皆に言う。
「俺のためにつまらん作戦に付き合わせて、悪いな」
「訓練と思えば、なんてことは無いさ」
海老名が井上に缶コーヒーを投げ渡しながら言う。
「訓練と言うより、暇つぶしだな」
後藤が乾杯するかのように、缶コーヒーを少しだけ上げながら言う。
「皆さんタフですね、僕は疲れましたよ」
「お前の訓練も兼ねている。この程度で疲れたとは、もう少し鍛えないといかんな」
八神が言う。
勘弁して下さいよと言うように天を仰ぐ石川を横目に海老名が
「国際首脳会議の後からだな、海外での行動が増えたのは」
「外国のスパイ衛星がお前を追っているんじゃねえの。立ちションも出来んな」
井上に向けた後藤の台詞に笑いが起こる。
スパイ衛星の高解像度は地面を這う蟻の種類を判別出来る程になっている。
「笑い事じゃねえ。海老名、そんなもんお前が全部壊しちまえ」
「国際問題に俺を巻き込むんじゃない。特別手当でももらっとけ、覗き代の」
再び笑いが起こる。
「全く。皆様方と一緒に仕事が出来て嬉しいよ、俺は」
「ありがとうございます!」
石川もZ班に十分馴染んで来たようだった。
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