第4話

「ガイ。

 聖女の名を騙って月神様を裏切っている月神殿を滅ぼしてください。

 貴男を裏切り、月神様の名を穢した者を殺してください」


「はい、お任せください聖女セイラ。

 必ず月神様の恩名を穢した者を滅ぼしてみせます」


「頼みましたよ、ガイ。

 それが終わったら、月神様が示された荒地を一緒に開拓しましょう」


「はい、聖女セイラ」


 ガイは今迄の恨みを一気に晴らした。

 だが偽勇者ロイのような腐れ外道とは違い、痛めつけて愉悦を感じるような、下劣な性格ではない。

 偽勇者ロイ、偽獣人戦士モア、偽聖女エタ、攻撃魔術師ラルが一刀で殺された。

 彼らのような偽者に、元の力を取り戻し、月神の加護と聖女セイラの支援を受けたガイには、全く抵抗できなかった。


 だが、偽勇者パーティ、ドラゴンファングだけが攻撃されたわけではない。

 ロンド王国にある堕落した月神殿全てが攻撃された。

 ザビ一家のような、月神殿の手先となって人々を苦しめていた犯罪者集団も、ガイの振るう斬馬刀の血祭りにあげられた。


 一方聖女セイラが所属していたジオン王国だが、ガイがロンド王国にある全ての月神殿を滅ぼす頃には、すでに全ての民が死に絶えていた。

 月神は慈愛を示す神であると同時に、夜の神でもあるのだ。

 自分が選んだ聖女を陥れ、神を蔑ろにした人間を許しはしないのだ。


 ジオン王国に住む人間は、王侯貴族も平民も、身分に関係なくしんでいた。

 だが国自体がなくなったわけではない。

 月神を蔑ろにした人間が、どういう末路をたどるかをしら示すために、夜の眷属であるゾンビに変えられていた。

 疫病の蔓延で、うまれてきたことを後悔するほどの激痛と痒さで一カ月苦しんでから死に、生きていた頃の心を持ったまま醜いゾンビに変えられてしまった。


 近隣の、いや、大陸中の人間すべてが、月神はもちろん全ての神々を恐れ敬った。

 大陸中の人々が、ジオン王国がゾンビの国である限り、神への畏怖を忘れない。

 そんな状況になかで、聖女セイラとガイは月神が示した新天地に向かった。

 彼らの建国物語はまた別の機会に。

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転生戦士は勇者パーティーを追放されるも、追放婚約破棄令嬢に救われ、スローライフを目指す。 克全 @dokatu

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