17話 猫目石

「みゃおん」


 再び、鈴の音が鳴った。


 気がつくと、目の前に先ほど全裸で寝ていた猫の獣人の女の人が立っている。


 女の人は甲冑に身を包み、丈の長いスカートを履いていた。 


「うみゃー……キミたち、ちょっとおいたがすぎるよ」


 女の人に納刀しながら睨み付けられた三体のトロールキングは、恐怖のあまり身動きがとれなくなっている様子だった。


「ふしゅー、ぎりぎり間に合った……」


 女の人は、僕とノルンを掴んで両脇に抱き抱える。ついでに、背中にはノルンが持っていたメイスまで背負っていた。ノルン以上……ありえない力だ。どうしてそれで立っていられるのだろうか。


「グギャギャギャギャアッ!」


 女の人が背を向けた途端、襲い掛かろうとしてくるトロールキング達。早く知らせないと。僕は声を振り絞る。


「あぶ……な……い……」

「あ、言い忘れてたけど、キミたちもう斬られてるから」


 動き出したトロールキング達はそのまま細切れになり、ただの肉塊へと変貌する。その技は圧倒的だった。


「動かなければ、もう少し長生きできたものを……。言わんこっちゃにゃい」


 その時、僕は理解した。その胸元で揺れている、鈴の形をした見たことのない冒険者のペンダント。彼女こそが珠玉ジェムの階級に所属する最上位の冒険者であることに。


 猫目石キャッツアイ、シャーロット・メイクン。


 神技と称えられる特殊な剣技を扱う獣人の剣士。


 僕はとんでもない人と出会っていたのだ。


「帰って一杯やるにゃ」


 シャーロット・メイクンはクールにそう呟いた。

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