第4話 彼女達の事情
僕は今、本人がいない真猫さんの部屋で、猫のひなたを膝に乗せ座り彼女のお母さんの話を聞いている。
どうやら真猫さん一人だけ、名字が違うらしい。
だから橋本達も知らなかったんだ。
「理由はちょっとまだ言えないのだけど、四人は本当の姉妹兄弟なの」
「はい……」
って、なぜ僕にそんな話を……。
そっか!
真猫さんは、クラスで浮いている。その彼女が僕を連れて来た。唯一のお友達!
「あ、私だけ、学校違うんだ。ゆうきって言います。よろしくね。ソウくん」
と言ったのはボーイッシュなお姉さんだ。
「私は、はるな。隣のクラスだから。宜しくね」
「俺は、たける。余談だけど全員ひらがなだから」
うん。その情報は別にどうでもいいかもね。
「私は、ミウ」
って、お母さんも自己紹介ですか。
「ご存知の通り、
真猫さんのお母さんの紹介もあったので、流れで僕も自己紹介。
「で、真猫さんはどこへ行ったんですか?」
彼女だけ戻ってこない。
そう質問すると、全員僕をジッと見つめて来た。正確には、猫のひなたを見ている。
いや猫が真猫さんだって言わないよね?
さっき、一瞬そう思ったけどあるわけないよね?
違うって言って!
「彼女には、買い物を頼んだのよ」
お母さんの言葉に僕は安堵する。
うん。お客さんを連れて来た彼女に、なぜ買い物に行かせたかなんて聞かない。
し、知らなくていい事もあるはずだ。
ぺろん。
「ひゃ」
とつぜん、ひなたが僕の手を舐めた。
脅かさないでほしい。
にゃ~。
『手がしっとり』
あぁ。なんか嫌な汗をかいたからね……って、また聞こえた!
チラッと、四人を見ると、何となく僕の様子を伺っているように見える。
ど、どうしよう。
これ間違いないような気がする。
夢? そうこれは、夢だ。
猫を撫でたいと思ったから夢を見ているんだ。
僕は、真猫さんが帰って来なかったけど、用事があるからと帰る事にした。
平日やっていない猫カフェ。
猫四匹が彼らなら平日は営業できない。
いやいやいや。そんな事、あり得るはずがない!
結局、今日の事は夢ではなかった。
□
そんな事があっても彼女は、お昼を一緒に食べようと言って来る。
僕も断れず、いやむしろ誘ってくれるのを待っていた。
みんなは、真猫さんを怖がっている様だけど、僕として全然怖くない。むしろかわいい。
彼女と会話できるのは、このお昼の時間だけ。不思議な僕らの関係。
あぁ、本当なら猫を撫でに行きたい。
でもあの猫、真猫さんかもしれない? いや人間が猫に……猫が人間に? どっちにしてもあるわけない!
そう思ってもなかなか訪ねづらい。
猫カフェに行けばいいけど、お金がなぁ。
彼女と仲良くなれば、ただで触れると打算的に思ったりして。
でも結局言い出せず、金曜日の授業が終わってしまった。
どうしようかな。土曜か日曜日、行ってみるかな。
一旦家に帰った僕は、外へ出てふらふらとしていた。気分転換だ。
色々考えていたら頭がこんがらがって来た。
って、気がついたら猫カフェへ足が向かっている。いや行ってもしまってるし。
あ、コンビニ。あそこで買い物をして帰ろう。
すぐさきが、真猫さんの家というところにコンビニがあった。
コンビニの近くに男が二人、そこに真猫さんが近づいてく!?
真猫さんは、制服姿だから学校帰りの様だけど、なんか言い合い始めた!
「どうしたの! 警察呼ぶよ!」
走って僕はそう叫んでいた。
うん。ひ弱な僕じゃ勝てないから警察を引き合いに出しました。
男達は、驚いた顔をして車に乗り込み去って行く。
「はぁはぁ。真猫さん、何やってるの? 相手、男二人だよ?」
「だって、明日ここに強盗に入るって言っていたから……」
「え? 何だって?」
耳がいいって話は本当だったんだ!
いやそれより……。
「何考えてるの? 危ないじゃないか! バレた事を知った二人が何かしてくると考えなかったの? せめてお店の人に言おうよ」
まあ店に言ったとして、信じてくれるかどうかわからないけど。本人に言うよりはマシだ。彼女は、正義感が強いのかもしれない。
「………」
真猫さんは、俯いて泣いてる?
ど、どうしよう。言い過ぎた?
「ちょ……怒ってないから。心配なだけで、えーと」
「うん……」
俯いたまま僕の腕の服を引っ張り顔を近づけて来た。
ドキリとするも、すんすんとなぜか臭いを嗅いでいる……。
「やっぱりこの臭い落ち着く」
ひゃ~。
涙目で上目遣いで見られた僕は思わず彼女のかわいさで、抱きしめたくなった。
「そ、そりゃよかった」
そう言って、目をそらす。
なんなんだ、一体!
「ねえ。家に寄って撫でて行く?」
って、まだ上目遣いなんだけど。
うううう。まるで私を撫でる? みたいな言い方しないでよ。
「………」
頷く事しか出来ない僕。
ふと、コンビニから出てきた人と目があった。
ひゃ~。
公衆の面前で僕らは何をやってるんだ!
「真猫さん! お家行こう!」
凄く目立ってるから。
僕は、恥ずかしさにそう言うと、嬉しそうにうんと真猫さんは言った。
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