第3話 彼女家を訪ねたら
ドキドキドキ……。
僕は、なんて大胆な誘いをしたんだ。一緒に帰ろうだなんて!
よく考えれば、小学生の頃近くの女子を含めた集団で帰った事はあったが、女の子と二人っきりで帰った事なんてなかった。
僕的には、猫のひなたに会いたくなって、どうせなら帰りに寄って行こうと思っただけだ。
僕らは、徒歩で帰れる距離だから歩いて下校。つまり並んで歩いている。
「ねえ、ソウくん。そう言えば、この前は迷わず帰れた?」
うん? この前……あぁ、迷子になった日の事か。
もしかして真猫さん、店の奥で見ていたのかな?
「うん。おかげさまで。でも迷ってみるもんだね。猫カフェに辿り着いたんだから」
「運命、感じるよね」
「え?」
それってどういう意味?
時たま、彼女の言葉にドキリとさせられるよ。
歩いて30分程で猫カフェについた。
「どうそ」
そう言って招かれたのは、裏口というかお家の玄関?
うん? もしかして、そう取ったのか!
「あの、僕は、猫カフェに寄るって言う意味だったんだけど」
「え? カフェ? 平日やってないけど」
「え!?」
そうなのか?
休日限定だったのか!
それじゃ、家に寄っていいって聞けば、猫カフェじゃないよな。お家だよな。
真猫さんは、それOKだったの?
「帰っちゃうの?」
ちょっと寂しそうに言われ、ドキリとする。
まあ、猫カフェは開いてないけど、猫達には会わせてもらえるかもしれないし。
なんて、言い訳して僕は、ちゃっかりお邪魔する事にした。
あぁ。引っ越ししてきてから緊張の連続だ。
「あら、ソウくん。いらっしゃい」
ソウくんって、真猫さんのお母さんまでそう呼ぶんだ。
彼女、家で僕の事をそう言って話しているのかも。ちょっと照れる。
「おじゃまします……」
って、僕おじゃまして親的にOKなの?
か、彼氏とか思われてるとか?
それとも、猫好きなお友達として?
って、そのまま真猫さんの部屋に招かれた。
彼女の部屋には、猫の遊具――いわゆるキャットタワーという物が置いてあった。
そして、ベットの下にあるタイプの勉強机。それぐらいしか部屋には物がなかった。
真猫さんは、折り畳みのテーブルを出して来た。
なんか申し訳ない。
「ご、ごめんね。急に来て。あ、あのさ、猫のひなたにも会いたいなぁなんて思ってさ……」
猫グッズがここにあるのだから、ここで普段猫と過ごしているんだと思って言うと、首を傾げた。
「猫の方がいいの?」
「え!?」
もしかして、猫と張り合っている?
こういう場合は、なんと言ったらいいんだ。
「ひなた。ちょっと……」
いつの間にか、お母さんがドアから覗いていて、彼女を手招きしている。
「今、連れてくれるわね」
と、真猫さんを連れて二人は僕を部屋に残し出て行った。
どうしていいかわからず僕は、立ったまま猫のひなたを待つ事にする。
「お待たせ」
「あ、うん……!」
真猫さんが猫のひなたを連れて来たと思ったらボーイッシュな子が連れて来た。
真猫さんより豊かな胸だから女の子に間違いない。
もしかして、真猫さんのお姉さん?
「はい」
ひなたを手渡され、鞄を足元に置き抱っこする。
あぁかわいい。
一番、人懐っこいんだよな。
喉を撫でれば、目を細め喉を鳴らす。
にゃ~。
『きもいい』
そう。気持ちいか。よかった……え?
今のって、猫の声?
猫のひなたを見ていた僕は、顔を上げた。
そこには、ジーッと僕を見ている彼女がまだいた。彼女じゃないよね?
「えーと……お姉さんですか?」
「うーん。姉と言えばそうなのかな?」
「え?」
どういう事?
「ソウが来ているって!?」
と、突然もう一人部屋に入って来た。
ふわっとした長い髪の女の子。って、同じ学校の制服だ。真猫さんと同じ制服。
うん? 姉妹? 親戚? お友達!?
って、なぜ僕を知ってるの?
凄く噂広がっちゃってる?
「あぁ~ほんとう~だ」
ちょっと間延びした声が聞こえると思ったら僕と同じ制服を来た男子。
彼らは一体……。
「驚かしちゃったかしら? 実は四つ子なのよ」
「え~!!!」
驚きだ。四つ子だなんて!
うん? 橋本は何も言ってなかったけど知らないの?
普通なら言ってきそうなものだけど。
にゃ~。
『撫でてよ』
「あ、はいはい」
僕は、無意識に言われた通り猫のひなたの喉を撫でた。気持ちよさそうに喉を鳴らす。
にゃ~。
『きもちいい』
「そう。よかった」
うん? あれ? 今のって……。猫のひなたがしゃべった?
そうっと、顔を上げると四人共じっと僕を見つめていた。
今、猫の声が聞こえたよね? って聞きたいけど、ガン見されている。
「波長が合う子が現れたわ!」
「うん。ソウって居心地いいもんね!」
真猫さんのお母さんが言うと、ボーイッシュのお姉さんも言う。
居心地って……。
みんな嬉しそうに、僕の目の前で喜んでいた。
一体何がどうなってるんだ?
ごろごろごろ。
僕の腕に抱かれた猫のひなただけが、のんびりと喉を鳴らしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます