第2話 彼女の噂
「ソウくん。一緒に食べよ」
次の日、今日も
特段誰かと食べる予定もなかった僕は頷く。
でも周りの目が気になるかも。
今日は教室だ。彼女は、自分の椅子を僕の机まで持って来て、一つの机で一緒に食べる事になった。
「今日は、お弁当なの?」
「あ、いや。おにぎり」
「自分で握ったの?」
「あ、うん」
これぐらいならできるからね。
やっぱりパン一個じゃ足りなかったし、お昼代くれないし。お弁当を作れないからおにぎりになった。
おなかいっぱい食べたいから三つも作って来たんだ。
「わぁ。食べたい!」
「へ?」
三つあるおにぎりの一つを彼女の前に置いた。
中身は全部一緒のおかか。
「中身は、おかかだけど」
ちょっと照れながら言うと、ありがとうと微笑んだ。
あぁ、かわいい。
しかしなぜ彼女は、僕にかまうんだろう?
「ばくりっこ」
うん?
そう言って真猫さんは、僕の目の前にメロンパンを置いた。
「ば、ばくり?」
「ばくりっこ。交換って事だよ」
「あ、うん。ありがとう」
それにしても真猫さん、今日もパンを四つ食べる気だったみたいだ。手元にパンが三つある。
昨日僕が一つ食べちゃったけど、足りたのだろうか?
「あ、塩加減がちょうどいい。美味しいよ」
「え? あ、ありがとう……」
褒めて貰えた。素直に嬉しい。
しかし、クラスメイトの視線が気になる。
何かささやいているクラスメイト達。
僕達、付き合っていると思われているのかな?
手が早い奴めとか、思われていたりして。
チラッと真猫さんを見ると、にこっと微笑まれた。
「気にしてないから大丈夫」
「え?」
何を?
まさか彼女、いじめにあっているとか?
そうは見えないし、誰も彼女に近づくなとも言わないし、僕自身いじめを受けてないから違うだろうけど。
なぞだ……。
「あ、そうだ。今日、真猫さん家に寄っていい?」
「うん」
と、にこっと微笑んだ。
猫カフェに寄って帰ろう。
でも月に数回しか行けないよな。お小遣いがなくなる。
彼女が声を掛けて来るのは、お昼を食べる時のみで、後は休み時間は机に顔を埋めて寝ている。
なんか見た目と行動がチグハグだよなぁ。
□
午後の授業は体育だ。
男子は、バスケットボールだった。
「なあ、
初めて真猫さんの事を聞かれた。やっぱり気になるよな。
って、なぜか話しかけてきた彼は、辺りをきょろきょろ見渡して確認している。
彼の名前は……。
「あ、俺は橋本」
「よ、宜しく。で、何を探してるの?」
「いや、彼女地獄耳だからさ」
彼女? もしかして真猫さんの事だろうか?
「小声で話しても何故か聞こえてるんだ」
「はぁ……」
もしかして、彼女はクラスで浮いているのか?
特段仲良しのグループもないようだし。
「今日、お昼一緒に食べていただろう」
「あ、うん。一人だったから見かねてかな? 彼女、優しいね」
とりあえず、当たり障りないように言っておこう。
「うーん。結構、ずげっと言うけどな」
「そうなの?」
確かに、はっきりと物は言っているかもだけど。
もしかして、何かあったのか?
「何か前に事件みたいなのあったの? 喧嘩とか……」
「そうなんだよ」
と、辺りを見渡しながら橋本は言った。
そこまで、彼女は怖いのか!?
「一年の時なんだけどさ、時期は今ぐらいかな。教室の窓側の端っこで、目の前の奴が猫をいじめたって言う話を小さな声で話していたんだ。俺の前の席で話していたから俺は聞こえたんだけどさ」
そっか。それが聞こえて怒ったのか。
猫カフェをやっているぐらいだから猫好きだろう。
「彼女、教室のドアの所にいて、そこからずがずがとそいつらの所に来て、猫をいじめるなんて最低! って、叫んだんだよなぁ」
「え!?」
小声で話していたのに、聞こえたって事!?
「もちろん、何だよって返すじゃん。聞こえてるわけないから。そうしたら真猫さん、そいつらが言った言葉をそのまんま言ったんだよ。そう言っていたでしょうって、あれには驚いた」
すご! 本当に地獄耳だ。
「その後、取っ組み合いというか、真猫さんが彼らをひっかいたりかじったり……それはもう、みんな驚いたよ。見た目とのギャップがねぇ。しかも手加減なし。まあその男子は猫をいじめた事がバレて、その事でがっつり叱られたってわけ。まあ彼女も叱られたけど、気にしてなかったみたいだな」
……思っていた感じと全然違う子だった。
けど許せなかったんだろうね。
僕には、クラスメイトに突っかかっていく勇気はないけど。
「まあ、それが大きな事件かな。内緒話は、筒抜けっていう話だ」
それだけで、そういう事になってるのか。
「優しい子じゃないか。猫の為だろう?」
「そうか? 女子とも喧嘩していたけどな」
「え……」
結構お転婆なんだな。
「まあ、中身はあれだが、見た目はかわいいだろう。だから告白されるみたいなんだけど、犬の臭いがするから嫌だとか、凄い理由でふるらしい」
マジか……。
犬の臭いがついて帰ったら猫が寄り付かなくなるからかな。
「女子は女子で、彼氏を取ったとか文句を言うから取っ組み合いの喧嘩になるわけ。で、彼女を見てひそひそ話をすれば、聞こえていたようで言った事はを言われて、堂々と目の前で言えば? どうせ聞こえてるんだからって……怖いだろう」
確かに、凄すぎる。
でも悪口を言わなければ大丈夫って事だろう?
まあそんな事があれば、クラスで浮くし目立つか。
その彼女が、僕に興味を示したなら僕も注目の的なのか?
「僕って、相当目立ってる?」
「二人の関係って? って、言われてるけど。一番の有力は、下僕なのかって話」
「下僕!?」
それって僕が彼女の下僕って事だよね?
どう見たらそうなるんだろう。
彼女は、相当怖がられているようだ。
「で? どうなの?」
「ここに引っ越ししてきて道に迷った時に、彼女の母親に道を聞いたの。それだけだよ」
嘘は言ってない。ただ、その時、彼女には会ってないけどね。
橋本は、やっぱり知り合いだったんだなと、みんなに話しに行った。
おいおい。それ、触れ回る事なくないか?
僕の迷子の話だろ!
まあこれで、下僕の話は消え去るだろうけど。
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