EP01-3



「あぁー、くっそめんどくせぇし、くそ疲れたぞー」



「エギンさん。お疲れ様です」



 大仰すぎる愚痴を吐きながら、エギン・アーマルガムは会議室のような部屋に据え付けられた円形のテーブル、その一席に乱暴に座る。そんな彼の粗雑な対応を不愉快に思う者も一定数いるのだが、彼の戦場での無類の強さは不可欠だ。人柄は気に入らないが功績は認めざるを得ない。

 いつの間にか、周りの人によってつけられた通り名は『大佐』だった。その名前こそが彼を信頼する証と言わんばかりに送られたのだが、本人は大層迷惑そうだった。



 ここはロード・オーダー・ルームと呼ばれる場所。

 幹部クラス、またはそれに準じるクラスの人間だけが入れる場所であり、儀式的な意味で円卓を添えらているだけの場所。円卓があるのなら、何処でも良いという飾り気の無い場所である。円卓自体も、別に特殊な謂れがある物でもない、ただの木製の机だ。

 この部屋の本質は、自分達がロード等であっても頂点に立つ者、キングではないと戒め確認する場所。その信念が何故生まれたのか、それはまた別の機会に語る事になる。



 エギンを労いながらその向かい側、その一席に座るのは、暴れさせられていたアリッサをあっさりと捕らえた蒼の鎧の騎士。

 彼の名前をレンド・アバスティア。現状で最強とされている騎士にして『ロード』を冠する事を公的に許された男。



 その隣には、一言も発することも無く憮然とした顔で座る狐の獣人、玉輝たまき・アストルデ。顔に、私は機嫌が悪いです! と分かりやすく書かれているのだが、その理由はここ数日の出来事が原因であり、エギンと同じ様に愚痴りたいのを我慢しているのが丸見えである。

 彼女が不機嫌な理由を知っているエギンは、特に何も言わずに笑う。



「ふっふっふっ~、僕は楽しくて楽しくてしょうがないけどねぇ?」



 そんな玉輝たまきとは対照的に、ご機嫌でしょうがないと言わんばかりの陽気な態度で白衣の男が入ってくる。 

 その声の主が陽気になっている理由には大体の想像がつく。だからこそ、益々玉輝の機嫌が降下する。悪趣味な、そう思いながら、玉輝たまきがそれを男へ直接告げる事はしなかったのは普段の積み重ねたものがあるからだ。同時に、どんなに性格に問題があろうと、使えるのは確かなのだから。

 


 白衣の男の名前はフラード。フラード・F・レスティア。

 魔術と科学、それを合わせた魔道化学の最先端技術者であり最高峰。ゆえにあらゆる学術界から嫉妬と羨望を込めて『フェアリーライト』の称号を与えられた世界屈指の天才にして狂人。狂人であることを隠そうとせず、それでもなお近づいてくる人間を見極める冷静さも兼ね備えた、正気のまま狂っている男。

 フレードの見た目は、160cm前後の平均的な身長に金髪碧眼の綺麗な男。55歳になった今でも30代後半ぐらいにも見える、化け物染みた若々しさを保っているので、裏で何か特殊な薬でも使って老化を防いでいるのでは? と女性陣が探っているとかいないとか。



 戦争部門統括 『大佐』  エギン・アーマルガム


 

 魔術部門統括 『太陰』  玉輝たまき・アストルデ



 騎士部門統括 『ロード』 レンド・アバスティア



 技術部門統括 『フェアリーライト』 フラード・F・レスティア



 この四人こそが組織、王無き器ノーヘッド・キャリバーの筆頭幹部である。


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