EP00-EX2
押収物
シア・ハルーラ 手記No04
あぁ、やってしまった。
わかっていた。わかっていたはずなのに!!
魔術関連の世界で生きていると、大体の人間が大人になる頃には二通りに分類される。
即ち、世渡り上手か引きこもりになるか。
自分の研究だけに集中しようとしても人材に資材、何より潤沢な資産が必要だから世渡り上手に。外の人間が口を出してくることや、自分が生み出した技術を利用しようと近づいてくる存在を疎ましく思うことで引きこもるか。
私は例外的にそのどちらでもない、夫となった彼と幸せになる道を選んだわけだが。研究自体は楽しかったし、多くのやりがいもあった。けれど疲れてしまったのだ。様々なしがらみに。
だが、彼の――××××の甘い誘惑に乗った時点で私は覚悟を決めておくべきだったのだ。
身の振り方を決めることもせず、何かあった時ではなく何かが起こらないように整えておくことの重要さ。それでも何か起きた時の対応と覚悟。それらすべてが魔術研究の世界に戻る為の最低限の条件であることを私は忘れていた。
故に私は利用された。恐らく、彼にとって利用する相手は私でなくても良かったのだ。数多くある当ての中でたまたま私が乗った。だから利用した。彼――××××にとっては本当にそれだけのことであり、そういう世界なのだから。
私は自分が利用された事実に気が付き、むしろ気づくのが遅すぎたくらいだと自己嫌悪した。その時点ですでに取り戻せるものはないだと理性が断言しているが認められない。認めてはならない。
だめ、だめだ。
だめなのだ!!
そこからの行動は即座に起こした。如何に平和な日常で生ぬるくなっていた私でも、何も出来ないわけではない。何も出来ない訳が無いとただ、そう信じたかった。
そんな私の個室に届けられた小包。
宛名は無い不審物だが、開ける前から予感があった。
――あぁ、終わってしまった。
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