金木犀

走り出した君の後ろ姿


路地裏の金木犀が地面に散って絨毯のようだった


右手に持った手紙を握りしめて


君の名前を大声で呼んでみると


返ってきたのは 金木犀の匂いだけだった


秋は どうしてこんなに寒いんだろうか


冷えたこの手を温める大きなポケットが付いていたならば


今すぐこの右手を隠すのに


でも朝だけは明るくて


狭いこの路地裏を 只の日常だと気づかせてくれる


取り残されたのは 右手で握り潰してグシャグシャになった気持ち


悔しいから


黄色い絨毯には目もくれず


飛んでいるカラスにだけ笑いかけてみた


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