第2話 お姉様と仲良くなりたいだけです

「お、オリビアもう起きて大丈夫なのか!?」


「ご心配おかけしました。もう大丈夫ですよ、お父様」


「ほ、本当に大丈夫なの?気持ち悪かったり、頭が痛かったりしない?」


「えぇ、何ともないです。お母様」



お父様とお母様は私の返答を聞き、心底安堵した表情になった。流行病にかかっていた娘が朝元気に歩いてきたらそれは心配もするし嬉しい気持ちもするよね.....。


ぐぅぅぅぅぉぉぉ


空気を読まない腹の音1つ。.....私のお腹よ、もう少し待てないのかい?


「ご、ごめんなさい.....」


「ううん、気にしなくていいのよ」


「そうだよ。早く食べようか」


「は、はい」


うぅ、せっかくのいい雰囲気をぶち壊してしまった.....。

私は恥ずかしくて下を向きながら歩いた。

お父様やお母様が待つ席へ


ではなく、少し離れた場所にあるお姉様の前に座った。



「「「.....!?」」」


私の行動を見て、お父様達が大きく目を見開いた。お姉様も下を向いて黙々と食事をしていたが、私が前に座った途端瞳が揺れて、

微かに瞳の奥が怒りで燃えていた。


「おはようございます、お姉様」


私は周りの目を気にせず、お姉様に話しかけた。


「っ.....おはよう」


お姉様は一瞬戸惑ったが笑顔で挨拶をしてくれた。笑顔でと言っても、目が笑っていない。誰が見ても分かるほど笑っていない.....。


「今日はいい天気ですね!お姉様、午後は一緒にお庭でお茶を飲みませんか?」


私はお姉様より年上(前世の歳を合わせたら)なのだから、こんな事じゃ負けない!


「悪いけど、午後は勉強だから無理よ」


「では、午前中はどうですか?」


「午前中はダンスの練習だから無理よ。というか貴方随分と口調というか雰囲気が変わったわね」


うっ!今の私の思考は前世の時のですから、とは口が裂けても言えない.....!


「えっと、.....そろそろ私もしっかりしようと思いま、して.........」


「そう」



うぅ、視線が痛い.....。でもでも怪しまれてはいない、よね?

というか、お父様やお母様は気づかれないようチラチラと見てくるけど、何で話しかけないんだろう?お姉様を嫌っているわけでもなさそうだけど、お姉様の顔を見たら悲しそうな顔をする.....。何だろう、この違和感?

あぁ、じゃなくて今はお姉様の方を優先しないと!


「あの、午後のお勉強私も一緒にしてもいいですか?」


「今日は1人で勉強するの。貴方に教える時間は私にはないわ。それに、貴方は昨日まで体調を崩していなのでしょう?なら、今日はまだ部屋に閉じこもってた方がいいのではなくて?」



んー、これ以上はダメかな.....?仕方ない。


「ご心配ありがとうございます。そうですね、午前中は大人しく部屋にいようと思います」


「それが、1番良いわ.........このまま部屋に閉じこもってればいいのに」


お姉様はそう言うと1人で部屋に戻てしまった。



ん!?

えっ、「このまま部屋に閉じこもってればいいのに」!??

お姉様、コソッと言ったつもりかもしれませんが、ハッキリ聞こえてしまったんですけど!?

そ、そんなにオリビアが嫌いなのか.....?


「お、オリビア?」


「何ですか、お母様?」


「今日はいつもよりアメリアに話しかけてたわね.....。どうしたの?」



一件簡単に訳が話せる問かもしれない。だけど不思議と私はその問に対する答えが分からない.....。


前世の家族は仲が良かったから今世もそうしたいと思っただけなはずなんだけど。それ以外にも理由がある気がする。心の奥深くに.....。お姉様を、お姉様達を救わないとって、誰かが、

が叫んでいる気がする。

そう感じると、記憶を思い出そうとした時にあった黒い霧が私の全身にまとわりつくような感覚がした。ゆっくりと着実に私の心を、感情を黒く染めるような.....。


つぅ、っと嫌な冷や汗が垂れた。


「「オリビア!??」」


「どうしたの!?顔色が凄く悪いわ!」


「直ぐに医者を!」


「あっ、お父様もお母様も私は大丈夫です!!ただ.....少し食べ過ぎただけだと思います」


「そ、そうなの?」


「はい、少し休めば直ぐに良くなります」


「良かったわ.....」


「お母様、先程の質問ですが.....私はただ、家族はやっぱり皆で仲良くしてる方が良いな、と思ったのです。それに、私はお姉様と仲良くなりたいのです」


これは、紛れもない私の気持ちだ。ちゃんと.....私自身の気持ち。


「.....オリビア、どうか頼む。あの子と、アメリアと一緒にいてやってくれ」


「お父様.....?」


「.....お願い、オリビア。親としてどうかと思うかもしれないけど.....私はまだ怖いの。あの子たちと同じように消えてしまうのではないかと.....」



「お母様?あの子たち.....?えっと、わか、りました」




その後私はモヤモヤしながら部屋に向かってゆっくりと歩いた。

午前中は大人しくするとお姉様に言ったので、部屋で本を読んだり刺繍をしていたりした。お昼は少し食べるだけにして、私は本を何冊かミナに持ってもらい(ミナにも今日は大人しくしてるように言われたがあれこれ説得して何とか2時間だけ許可を貰った)、扉の前まで移動した。


「すぅ、はぁ」


小さく深呼吸をして私は扉をノックした。


「失礼しますね、お姉様」


「お、オリビア!?.....どうしてここにいるのかしら?大人しく部屋にいるのではなくて?」


「部屋にいると言ったのは午前中だけと言いました。と言ってもミナには2時間したら戻るように言われています。ちなみにミナは部屋の前に待機しています」


「.....そうだとしても何故私の部屋に来たの?私は忙しいと言ったわよね?」


「はい、ですから私もここで本を読ませていただきたいのです。大人しくしていますから、それなら良いでしょう?」


「いっ、.........分かった、わ」


「ありがとうございます!」



ふふん!お姉様と言っても6歳児、妹が甘えたら中々ハッキリと「嫌だ」何て言えないでしょう!!朝はハッキリと言われたけどね.....、諦めなければ勝つんだ!!

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ここ乙女ゲームの世界だってんですか?〜ストーリーを改変なんかして、...います〜 新條 巴 @ritumao

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