第1話 美少女に転生

私は暗い闇から逃れるように、そっと重い瞼を開けた。

私は確か流行病によって3日以上発熱に.....。ふと、知らない街並みや食べ物が脳裏を横切った。


そして、自分の前世の記憶を思い出した。


「もしかしなくても.....転生?」


私は静かにしかしハッキリと呟いた。


いやー、転生ものには憧れてたけどまさか自分が転生しちゃうとは.....!

あれ、もしかしては私死んだのかな?転生ものって前世ではもう死んじゃったりしてるよね?


うーん、いつも通り大学に遅刻しそうになって急いで準備して、お姉ちゃんともいつも通り喧嘩して.....。友達ともいつも通り賑やかに楽しんで.....、夕飯もいつも通り美味しくて.....。


んん?おかしい。




自分の名前や自分に関するものが全く思い出せない。


思い出そうとすればする程黒い霧?モヤッと感に埋め尽くされる。

私の名前は.....。うーん?私の趣味は.....あっ、違うお姉ちゃんの乙女ゲームじゃなくて私の趣味を.....。


ダメだ、さっぱり思い出せない。


それと同様に今世の私の深い情報も分からない。

流石に自分の名前や1日の過ごし方はわかる。分からないのは私が熱心に書いてたものやそれがある場所、周りの目を掻い潜って行動してた場所などが全く分からない。

それがなんだか分かれば私自身の秘密やあの子たちの居場所が.....?あれ?私に秘密なんて大それたものなんてないし、あの子たちって誰?


ぐぅぅ


静寂な部屋に誰かの腹の音が.....。誰かって私しかいないけど。


とりあえずそろそろ日が登る時間だからミナを呼ぼう.....。


「あっ」


呼び鈴を探そうとキョロキョロと周りを見ていたら、大きな鏡を見つけた。


今の自分の姿は何となくは分かるが、ハッキリとは分からないのだ。だからやっぱり最初は姿を確認するべきだよね!


私はゆっくりとベットから降りて、よたよたと鏡の所まで歩いた。

昨日までの発熱のせいか、フラフラと倒れそうになったが何とか踏ん張った。

そして、ひょこっと鏡を覗いた。


「うわぁ、美少女.....!!!!!!」


毛先が緩やかにウェーブしているキラキラと輝く蜂蜜のような金髪。海と言うより、夜空に近い紫や青が混ざった瞳。頬がピンク色に染まった紛れもない美少女である。


こんな美少女なら1時間でも2時間でも自分の顔を見れるよ!


ぐぅぅぅぅぅぅぅ


おっと、いかん。腹の音がどんどん大きくなっていく……。


私はさっき見つけた呼び鈴に駆け寄り、リーン、リーンと音を鳴らした。途端、音は凄くないのだが、確かにそれは勢いよく近づいている。


そして程なくして私の扉が開いた。


「「「「「お、お嬢様!!!!!!」」」」」


「お、お、おじぉよ、ざ、ざまぁぁぁぁ、」


「お加減はどうですか!????」


「だ、だんなさ、いや、お、おくさ、」


「支度、いや、報告、いや、朝食、いや、」


「うぇっぐ、お、お嬢様よがぁっだぁ!」


ごめんね、5人一斉は何言ってるか分からない。ちなみに1番上からミナ、アン、リリア、レミーユ、ナナ。というか、ミナとにかく落ち着いて?!


「み、皆私凄く元気だから落ち着いて?」


「「「「「は、はぶぁい!」」」」」



うん、それは新種の挨拶なのかい?


「とりあえず、お腹すいたから朝食の準備と軽く身支度をしてくれる?」


「は、はい!お嬢様!!」


「えっと、朝食は旦那様達と?それともここにお持ちしますか?」


「お父様達と食べることにするわ」


「かしこまりました!では私は執事長に連絡してきますね」


「ありがとう、リリア」


「では、私は旦那様と奥様に連絡してまいります」


「よろしくね、アン」



私はミナ、レミーユ、ナナにお風呂や髪の毛のセッティングなどをしてもらった。

軽く身支度と言っても結構時間がかかる。その間に私は両親と記憶にあるお姉様の事を考えていた。お父様、イーサン・フローレス。くせっ毛の銀髪に紫の瞳。騎士公爵家の当主。同時に騎士団の団長も務めている。30歳には到底思えないようなキラキラパパである。冷たそうな見た目だが、お母様や私には凄くデレデレしていて締りがない。

お母様、ハーパー・フローレス。サラサラの金髪、そして青空のような瞳。優しく心穏やかだ。27歳なのだがお母様もキラキラママである。意外とさっぱりした性格でやると決めたことはやる、やらないと決めたことはやらないという頑固に近い。そして凄くハープの演奏が上手い!

お姉様、アメリア・フローレス。サラサラの銀髪に氷のように冷たい瞳。私の1つ年上で6歳だ。記憶の中の私はお姉様を慕っていたがお姉様はそれを嫌っていた。そして両親もまたそんな姉を嫌って.....いや、あれはどちらかと言うと。


「お嬢様、準備が整いましたよ?」


「へ?あ、ありがとう」


私は鏡を見るとゴクッと唾を飲み込んだしまいそうなほど驚いた。簡単な支度でもこんなにヤバイのかと。出来上がった私は美少女から超絶美少女に変わっていた。


準備が終わったら、いつの間にか戻ってきていたアンやリリアとミナ、レミーユ、ナナを後ろにお父様達がいる場に向かった。


昨日までの負担がある分ゆっくりと歩いていたのだが案外早く到達した。

ミナが扉を開いた時見に映ったのは、私を見て喜ぶ両親と.....両親や私には目もくれずただ淡々と食事をしているお姉様の姿だった。



あぁ、予想以上に家族仲はひねくれてる.....。

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