残り2日
「昨日はごめんなさい。もう大丈夫だわ」
「仕方ないさ。死が迫ったら誰だって怖いに決まってる」
今日もいつも通りに花蓮と屋上で昼飯を食べていた。
下を見渡すと枯れた木々が学校の周囲を囲っており、少し肌寒い風が吹くたびに枯れ葉が役目を果たしたかのように枝からゆらゆら舞い落ちる。もうすっかり秋だなと感じる風景だった。
普段なら熱く長く続く夏も今年は一瞬で過ぎ去ったと感じる。その分、楽しくて面白い夏だったということだろう。
それもこれも花蓮に出会ったからだ。彼女が今年の夏を人生で一番最高の夏にしてくれた。そんな花蓮が困っているのに、何もしないわけにはいかない。
「一つ、相談があるんだ」
俺は前々から考えていたアイデアを花蓮に提案してみる。この案は花蓮を死なせない対策としては、現状で最良だと考えている。
「問題の明後日なんだが……一緒に過ごさないか?」
驚いて意図を理解できない花蓮により詳しく説明をする。
「明日の夜中から最終日になるわけだ。そこから何が起きるのか俺も花蓮も分からない。でも俺がいない時に何か起きても守れない」
「そうね。今まで色んな死に方をしたけれど、もし運命が変わってないとしたら、少なくともいつか何か起きるわ」
このままいつも通りに過ごしては運命が変わったことを祈るだけの日になってしまう。そこで「自分が側にいたら救えた」なんて後悔だけは絶対にしたくない。
「だから明日、学校が終わったら俺の家に泊まりに来いよ」
「――え?」
「それに俺だけじゃなくて、健人と姫乃も呼んだから。四人もいたら大抵のことは何とか出来そうだろ?」
正直、人が多いことにこしたことはない。こんな大げさな話に乗ってくれるか不安だったが、健人も姫乃も二つ返事で引き受けてくれて心の底から感謝している。
この呪い期間から抜け出したら二人にお礼をしないといけないな。
「もちろん、景兄の許可も花蓮のお母さんの許可も取ってあるから心配しなくていいぞ」
「い、いつの間にお母さんに……」
家に三人も泊まることは初めてなので景兄に許可を取ると、承諾してくれたどころか花蓮のお母さんにも許可を取ってくれた。いつどこで知り合ったのかまったくの謎だが、景兄なら何しても不思議じゃなかった。
「後は花蓮の返事だけなんだ。聞いてもいいか?」
少しだけ間を空けて花蓮は答える。
「そんなの……いいよって言うに決まってるじゃない」
目頭に綺麗な雫を溜めながら、俺の提案を受け入れてくれた。
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