残り4日


「ホントに楽しい旅だったわ。明日から学校ってのが嫌になるくらいにね」


「間違いないな。ここ数年の中でも一番全力で遊んだ気がするぜ」


 あれから銀山を抜けてからは、地元で開催されていたお祭りに参加した。観光地の近くということもあってか多くの人で賑わっていたので、再度手を繋いで屋台をたくさん回ることになった。

『兄ちゃん、彼女のために頑張りや!』と射的に誘われた時には緊張とプライドで身体がどうにかなりそうだったけれど。


 終盤には花火も打ち上げられ、少し遅い夏の体験をしたという気分になった。あれ以上に綺麗な花火を俺は観たことがない。たぶん、一緒に観る人がこれまでと違ったからだと思う。


 その日の夜は片っ端からホテルに予約の電話をして、幸いにも空部屋があったホテルに泊まることになる。そこで花蓮とホテルマンの勘違いが発生し、なんと予約部屋を一つしか差し押さえてないことが判明。

 他のホテルを探せばいいものの、

『1部屋でいいわ。料金もその方が安いみたいだし。ということでお願いしますお姉さん』となぜが花蓮が引き下がらなかった。

 ……花蓮のお母さんゴメンナサイと心の中で誤りながら同じ屋根で泊まることにした。

 シャワーの音が聞こえた時には心臓が張り裂けそうだったので布団の中で素数をひたすら数えることになる。意外なとこで活用できたので勉強した甲斐があったものだ。

 もちろん、夜は何も起きずに朝を迎えた。

『ばかアゲハの根性なし』なんぞ聞こえたが聞こえなかったことにする。


 そして今日も朝から活動して多くの地を巡った。新鮮なことばっかで興味が尽きなかったが、これでも俺たちは地球の何万分の1も視てないのだろう。景兄が世界を周る理由が理解できた気がした。


 そんなこんなで夜になり、帰られるギリギリの時間で帰宅中というわけだ。


「帰るまでが旅行だからな、気を抜かないようにしないと」


 最後の最後で油断して怪我をした、なんてことがあっては花蓮ママに合わせる顔がない。


 しかし花蓮が急に静かになったので、ふと隣を向く。


「幸せそうな顔……。これを見られただけで俺も幸せだ」


 静かな寝息がリズム良く聞こえ、身体を完全に俺へ預けていた。帰りはおぶってタクシーで帰るか。





「あぁ……この時が永遠ならどれほどよかったか」




 こんな楽しい時ほど――あっという間に過ぎ去っていく。

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