残り6日
「さて、明日の最終確認をするわよ」
「いよいよだな」
金曜日の放課後、学校から徒歩5分くらいの距離にある喫茶店に花蓮と来ていた。学校から近いということもあり、ここは学生に人気の店舗だ。オシャレな雰囲気なのにドリンクの値段は安価で美味い。
今日は明日から予定している旅行の打ち合わせのため、ゆっくり滞在できる場所に行きたかったのだ。
「忘れ物をしても最悪は向こうで調達すればいいから問題はないわ。一番やっちゃいけないのは寝坊よ。これだけで全ての予定が狂ってしまうもの」
「わかってるよ。アラームをガンガンに鳴らすし、景兄にも起こしてもらうよう頼んでるさ」
俺はよく昼から学校に行くことがあるので特に心配された。しかし朝は弱いどころか強い自信がある。単純に夜遅くまで起きているから起きる時間も必然的に遅くなっているだけだ。
「そう、ならいいわ。始発の次に乗るくらい早い時間だから今日は早く寝るのよ」
「おう、任せとけ。昨日のうちに準備は終わっているから帰ったら寝るだけだ」
景兄にも今日の家事は最低限しかやってやれないと言ってあるので、残している仕事も課題もない。
「それにしても、旅行とは思い切ったな」
「せっかくだもの。私が楽しいって思うようなことなら、まず初めに遠くへ出かけたいって考えたわ。それに――」
花蓮は無理して笑った顔を作り、そのまま言葉を続ける。
「今までしたことないから、その、繰り返した分も含めて。だから少しでも可能性を探すためにね」
当たり前だが、花蓮もまだ呪いから抜け出すことを諦めていなかった。
「でも自分で言っておいて矛盾してしまうけど、旅行の間は私の運命の件は考えずにいきたいの」
今度は見栄を張らず、心の底から笑っていた。
「だって、せっかくアゲハと二人きりで旅行だもの。変なことを考えるなんて勿体ないわ。この旅行を全力で私は楽しみたい」
「ああ、それは俺も同じだ。友達と二人で旅行なんてしたことないから楽しみでしょうがないぜ。きっと、最高の思い出になる」
しかも好きな子と二人で旅行ときた。これが嬉しくない人類がこの世に存在するのかイヤいない。
兎にも角にも、明日の体調が悪ければ元も子もないので今日は早めに花蓮と別れた。
楽しみすぎて夜が眠れない……ことはなく、朝が不安なくらいぐっすり快眠できた。
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