残り58日


 今日も例のカフェに花蓮と訪れていた。どうやらここが気に入ったらしく、どこに行くか迷った時は、とりあえずこの店に来る流れになっていた。学校でいう屋上みたいな立ち位置になりつつある。俺としても落ち着く場所で気に入っているので問題はないどころか賛成している。街中に立地しているが、比較的に車通りが少ない場所にあり、騒音はあまり聞こえない。


「そういえば、期末テストどうだったんだ?」


 今は夏休みだが、この期間に入る前に期末テストが実施されていた。俺は見た目と素行の割に実は家でそれなりに勉強(景兄から鬼指導)していたので赤点は無かったが、花蓮はどうなんだろうと気になった。


「あんなの余裕だわ、勉強しなくても。ただ毎日の授業内容をちゃんと理解して課題をしっかりやればね。誰かさんみたいに不登校しなければ」


 俺の方をチラっと横目で見ながら花蓮は自慢してきた。少しだけイラっとしたので仕返しをしておこう。


「最近はしっかり来てるだろ? 誰かさんが寂しがるからな」


「べ、別に貴方が来なくても寂しくなんかないわよ!!」


「いや俺は健人と姫乃のことを言ったんだけどな」


「~っ!!」


 なんだコイツ、ちょろすぎないか。これから先の人生で詐欺に合わないか心配になる。……いつか人を見極めるコツでも教えてあげよう、景兄直伝の。


「じゃあ結果は何点だったんだ?」


「平均80点ってとこかしら。流石にもっと真面目に勉強している人には敵わないわ。てか私が抜かしてはいけない人たちだし」


 くっ…なんて奴だ。勉強した俺ですら平均60点だというのに、勉強してなくてその点数だと…? しかもその言い方だと「私なら本気を出したら一番になれるけど」みたいな感じで悔しい。


「あなた、もしかして」


「いや赤点はない。ないが…お前より低い」


「……ふっ」


 うわ〜、うっざ。絶対コイツいま見下した気持ちで笑ったな。


「あー、わかった。わかったよ、次の課題テストには勝つ。覚悟しとけ」


「はいはい、私に勝つなんて300光年早いわよ」


 課題テストとは夏休み後に実施されるテストで、どれだけ夏休みに勉強をしていたかで結果が分かれる内容だ。基本的に期末テストと少しかぶるため、復習した人が高得点を取れる形式になっている。なので夏の課題と期末テストの復習をすれば俺でも今から勉強すれば勝負はできるレベルにはなるはずだ。


 それから散々言い争った後に……

「テストの合計点で勝負する」

「勝者の報酬」

 それぞれ決めた後に解散することになった。


 そして別れる前に、花蓮は助言を残して去っていった。


「次のテスト、夏休みの課題からしか出ないと思うわ。期末テストの問題はあまり出ないはず。それだけしっかり取り組みなさい」


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