残り60日


「今日もひどい雨だな」


『ええ、そうね。まったく憂鬱になるわ』


 今日も今日とて雨なので、大人しく家に籠もることにした。しかし、暇なのは変わりないので、花蓮と電話をしていた。今思えば、花蓮と電話することは初めてだ。学校のある日は電話するほど話すことはないし、土日もわざわざ電話することもしなかった。そう思えば、花蓮とは少しは仲が深まったと思っていいのだろうか。だとすれば嬉しく思う。


『……この前は、いきなり帰るなんて言ってごめんなさい。せっかく景兄さんの勧めてくれた場所に行ったのに。なぜか、どうしても危ないって気がして』


「あー、そのことなんだが、なんで雨が降るって分かったんだ? あの日は天気が晴れだったし、予報でも雨と出てなかった」


『ただの……女の勘よ。ともかく、無事で良かったわ』


 やはりそうらしい。この言葉が嘘かどうか、実際に会って話さないと俺には分からない。たぶん景兄なら全てお見通しなのだろうが、まだその域に達するには時間がかかる。


『次はどこがいいかしらね』


「ふっ、もう遊ぶことは確定なんだな」


 こちらから誘うつもりだったが、どうやらあっちで既に遊ぶ予定は決まっていたようだ。


『あ、いや、これは……そう、前回の謝罪も含めてのお詫びよ!! 決して遊びたいとかじゃないから!!!』


「すまんすまん、冗談だよ。むしろこっちがお礼を言わないといけない立場だ。お陰で雨に打たれず帰れたんだから」


 電話の向こうでも花蓮が怒っているのが目に浮かぶ。これは次あったとき不機嫌そうだ。花蓮がテンション上がりそうな場所に誘うか、オシャレなお店を景兄に聞いてみよう。


『と、ともかく、早く晴れることを祈るわ。そうじゃないと遊びにいけないもの』


「ああ、そうだな」

 

 あまり興味のないように振る舞いながらも、実は内心では楽しみにしていた。

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