残り73日


「…………」


「…………」


 週が明けて月曜日、花蓮が例のごとく隣で座って飯を食べているのだが――なぜか機嫌が悪い。思い当たる節といえば先週の金曜日に屋上へ行けなかったことぐらいなのだが、そんなに悪いことだっただろうか。

 確かに何も連絡をしなかったことは悪かったかもしれない。いや、そもそも毎日ここに来ることは約束でも何でもないので怒られる意味が分からない。あの日は例の件のお礼として健人に護衛を頼まれてしまったので、同行していた。だから屋上に行けなかっただけだ。


「なあ、何か悪いことをしたなら謝るから機嫌直せよ」


「別に……アゲハは悪くないわ」


「じゃあなんで怒ってんだよ」


「怒ってないわ」


 あー、めんどくせぇ。今まで何度もイラついたことはあるが、今回はそれとはまた違った苛立ちだ。何というか、めんどくさい。理由があるならあると言ってくれなければコチラとしても改善のしようがないのだ。


「まぁそうよね。私が勝手に近づいただけでアゲハは悪く無いし、むしろ最初は拒絶されていたじゃない」


 花蓮は上の空でずっとぶつぶつ何か言っている。もうわけがわからない。


「私がここにいては勘違いされるわね。今日で最後にするから。今まで……その、ありがとう。楽しかった」


「ちょ、おい、待てよ!!」


 そんな声も虚しく、花蓮は俺の前から姿を消した。


「まじで何なんだ。意味が分からねえ」



 結局、何が悪いのか分からないまま一日が終わった。


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