残り90日


「関係を考えるといったな。あれは嘘だ」


 景兄から助言され数日間、しばらく何も言わずにアイツ(柏木花蓮)と付き合ってやったが――


「なんで俺と関わるのかまったく理解できない……っ!!」


 先日からアイツは飽きずに俺の元にやってきた。しかも決まって昼休みに屋上にやってくる。俺が一人だと都合がいいのだろうか。まあ普段の性格と真反対と言っていいくらいに違うから、周囲には隠し通したいのかもしれない。

 そんな感じにしばらく思考していると、遠くから扉が開く音がした。


「噂をすればなんとやらだな」


「はあ、やっと昼休みだわ。あー疲れた……なにか言った?」


 凝った肩を解すように腕を上に伸ばしてリラックスをする。


「いや、なにも」


 すると彼女は「あ、そう」と興味を失くし、ちょうど一人分くらいの距離を開けて同じベンチに座り弁当箱を開けた。もうここで食べることが当たり前になってきた気がする。

 お互いに自分の弁当を食べ始めた頃、俺は当初から抱いていた疑問を彼女に投げかけた。


「なあ、なんで俺と関わろうとするんだ。」


「んー、そうね。まだ内緒ってことにしておくわ」


 箸を口に加えたまま空を見上げて呟く。どうやら何か考えがあっての行いらしい。


「……俺といると皆から嫌われるぞ」


 恐らく、彼女も薄々気がついているはずだ。俺が何でいつも一人で行動して、そして何となく避けられていることに。しかし彼女は、俺の不安とは逆に何食わぬ顔で返答する。


「いまさら私がそれを気にすると思う?」


 「別に私だっていつも一人じゃない」とその後に言葉を続けながらご飯を食べ進めていった。俺としては少し重めの話をしたつもりだったが、彼女にとっては何ら問題のないことだったらしい。その気持ちのギャップと彼女の普段との変わらなさに思わず笑いが出てしまった。


「ははっ。それもそうだな」


「自分で言ってなんだけどなんかムカつくわ!!」


 きっと俺が難しく考えすぎていたようだ。どうやら彼女は俺と友達になりたいらしい。そこに何か理由があろうと別にどうでもいいし、秘密にしたいことなんて誰だって一つや二つくらいあるだろう。


 「素直に友達になりたいって言えばいいのに」


 「だ、誰がそんなこと言ったの!? 勘違いもいい加減にしてほしいわ。私はただ気まぐれでここにいるだけよ」


 急に顔が赤くなったかと思えば、そっぽを向いていつもの毒舌を吐く。その言葉が嘘ってことくらい誰でも分かるし、特に俺に対しては嘘をつくことは無意味なことなのだ。


 「なんかその全てを見透かしたかのような目がムカつくわね。……まぁいいわ、貴方が照れ隠して私になすりつけようとしたってことにしといてあげる」


 「ああ、そういうことにしといてくれ」


 ――たぶん関係ないけれど、何故か今日の昼飯はいつもより美味しかった。

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