確信犯は主人公
「朝からえらい目にあうところだった」
幼馴染とその母による絡みは非常にまずい。高校生活に一抹の不安を感じるのは言うまでもない。
今日はおとなしくしとくか。おとなしくしててあのルートにつっこんだけれども。
先程の騒動により時間をだいぶ取られてしまった。6時半に家を出たが、いまでは7時を過ぎている。
「自宅最寄り駅の常夜駅からの電車はと、あ、まさかの8時発かよ」
田舎だからなのか30分に1本とは不便なものだ。さっきはあれほど利便性について語っていたというのに
というわけで次の電車まで30分以上待たなくてはならない。
しょうがないので駅の中へと向かい改札口を通る。
一番線の上り列車、つまり学校のある町方面目指して跨線橋を渡る。そのまま、一番ホームへと降り、近くのベンチへと腰を掛ける。
(朝はえらい目にあったな。それにしても後30分何しようか)
時間を潰す手段を考えながらベンチでくつろぐ。時間もあるのでこの前買った新刊を読もうとバックに手をかけて取り出そうとしていると
「おはようございます!」
急に目の前に現れてかつ顔を覗き込んできたことで、心臓が飛び跳ねるほどびっくりした。
圭佑「ど、どなたですが?」
この人のことは何も知らない。こんな人(女)近所にいたこと無いし。誰かは分からない。それでも思わずきれいな方なので見惚れてしまった。黒髪に三編みおさげでメガネをかけている知的な雰囲気を醸し出している美少女。今は完全に見つめ合う状態であるため自然と恥ずかしくなり思わず下を向きそうになる。
「あ、ごめんなさい。急に話しかけてしまって同じ制服を着ていたのでつい」
圭佑「同じ制服?あー確かに」
うん、よく見れば俺の通う青ノ春高校のブレザーをきている。ここらは田舎だし電車で都市部まで行かないと制服をみることはあまりない。それに男子は学ランで女子はセーラー服の学校が殆どなのでブレザーがどこの学校なのかおのずとわかる。
「すいません。自己紹介がまだでしたね。私は沢村恵美と申します あなたは?」
圭佑「奥村 圭佑です。青ノ春高校の制服を来ているということは先輩ですか?
ええーと沢村さん?」
恵美「いえいえ!私はつい先週ここらに引っ越してきたばかりです。今年から春ノ青高校に通う新入生ですよ」
なんと、新入生であった。かなり落ち着いているから先輩かと思ってしまった。
ついこの間まで中学生とは思えないような人だ。いやーこういう人がいいよほんと。
さっきまで散々幼馴染中坊あがりの女に振り回されたからな。まったく。
え、なにおまえも中坊あがりだろって? うるさいな。
恵美「後、沢村でいいですよ。同い年ですし」
圭佑「あーと沢村さ、んえー沢村、ミス・サワムラ」
恵美「あの〜奥村さん。無理にとは言いませんよ。ふふ」
年上の風格がある笑い方「ふ・ふ・ふ」だと!いやそうじゃない。
なんだろうか。むっちゃテンパっている俺。らしくないだろう。このラブコメ回避の帝王であるこの俺が、おさげに遅れをとるほどにテンパっているだと。ばかな‥
なんとか平静を装って話を続けなければならない。鋭い系クールキャラ設定が崩れてしまう。ってなんだっけその設定。焦
圭佑「いえいえ無理ではありませんよ。沢村は呼びにくいので恵美さんとお呼びしても?」
決まったー!沢村と呼び捨てにするのはおこがましいとしてさりげなく下の名前で呼ぼうとする戦略。
恵美「え?あっ!はい。らいじょうぶですよぉ」
沢村恵美は顔をほんのり朱に染めており、さっきまでの余裕のある表情は消えていた。
噛んでいる。あーかわいい。純粋に可愛い。
ではない!これはもしやしくじったか!いやしくじってるやん。調子に乗って主人公感だしてしまった。さりげーなく下の名前で呼んでしまったがためにあまり男性に耐性がなく下の名前で呼び慣れないので恥ずかしがっている。
あかん、フラグイベントや!しかし、なんというかこのギャップかわいい。
そう言っているわけにもいかない。なんとかしなければ。
圭佑「大丈夫ですか?どこかご気分が優れませんか」
おれは席を立ち、顔を赤らめている恵美さんのおでこに手を当てて顔を近づける。顔と顔との距離30cm弱。
すると、さらに恵美さんは顔を赤く染めてりんごのように赤くなった。なってしまった。
しまったああああ!!
これは間違いなく、ラブコメ主人公の行動。しかもごりごりの鉄板。
もう一度言おうゴリゴリの鉄板すなわちテンプレート。
恵美「あのっ!け、けいすけさん。近いです。それと大丈夫なので…」
圭佑「すいません。変なことしました。ごめんなさい」
あの一ついいですか。やってしまったものはしょうがないと思いますが、
あなた!地味に俺のことも下の名前で呼んでるやん!しかもテンパってからに
まあ、俺がその原因を作ったんですがね。しかし、拒みなさいよ!まったく。
俺は、彼女のおでこから手を離し、近かった距離をなるべく遠ざけるようにする
ソーシャルディスタンス‥‥(笑)
圭佑「体調が悪くないようで安心しました。それと急に‥‥ほんとにごめんなさい」
恵美「いえ。はい。そんなに謝らなくても、それほど嫌じゃなかったですしボソ」
顔はだいぶ元の色に戻っているが、なぜか耳がさっきよりも赤くなっている。
なぜなんだ。
そのようなやり取りの後
お互い無言のままベンチに座り電車が来るのを待つのだった。
鈍関係主人公はラブコメをさせない おうさかひなと @OusakaHinato
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