初めての依頼。


 あれ、昼ご飯、七人分じゃないの?十一人分あるけど‥。ああ、ドラたちの分か。でもなんでわかったんだ?そういえばレイカも神獣だからテレパシーが使えるのか。ご飯を食べながら送ってみよう。


(なあ、何で昼ご飯が七人分じゃなくて、十一人分だってわかったの?一回も庭のほうに来てないでしょ?)


 キッチンから庭は見えないはずだけど。しかもずっとキッチンにいたレイカは、なおさら見れないはず。


(はい。私はずっとキッチンにいました。で、なぜわかったのかというと、神獣は、テレポート、テレパシーそれとあと一つ何らかの特殊能力を持っているのです。で、私が持っているのが未来予知です。最高で、数時間後の未来が見えるんです。なので、羅人様が、召喚魔法をかけている時、きずいたんですよ。あの四人の方々は、私よりも、立場が上でなので、しかも、この世界の管理、監視を任されているので、少しでもおもてなしをしなければと…。)


 にっこり笑いながら答えてくれる。この子、Mじゃなければとっくに惚れているのにな。

「ちょ...」

 ん。なんか聞こえた?何でもないか。

「ちょっと!」

「はい!何でしょう!」

 いかんいかん。思わず敬語になってしまった。


「これからギルドに行こうって言ってるんだけれど聞こえてる?」

 やばい。マリーさんがキレてる。ここは上手く対処しなければ。


「聞こえてるよ。少しぼーっとしてただけ。で、今からギルドに行くんだって?いいんじゃない。ドラたちの能力も把握しとかなきゃいけないしね。」

 俺の説得力のなさに草。

「そうだね。丁度いい機会だね。俺達の初依頼だしね。」

 筋利、助け舟サンキュー。

 テレパシーの間の無言の時間を何とかしなきゃな。と思いながらも、俺は、食べかけだった昼ごはんを食べ始めた。


 二十分後‥‥


「もう、選ぶの遅すぎー」


 武器屋から出てきた俺達を待ち構えていたのは、武器を選ぶのが遅すぎて待ちかねた女子達だった。

 ドラ達は、町の門の外で待っててもらった。いいだろ。お前らだって買い物が遅い時だってあるだろ。って言おうとしたけど、死亡フラグにしかならないのでやめた。


 そもそも武器は、あいつらが選んでくれって言っていたのにな。

 まあそりゃあそうか。武器がなければ戦えないもんな。

 俺は、よく勇者が持ってそうな、長い剣を買った。持ち手の所に、魔石が全部で五個埋め込まれている。

 この世界は、持っている属性によってどんな剣や杖を使えるかっていうのは、変わってくるらしい。

 だから、持ち手に六個の魔石が埋め込まれている。見やすいからいいな。


 王累は、杖を買った。シンプルだが、同じ様に魔石が埋め込まれている。筋利は、ナイフみたいな短剣を買っていた。確かに持ちやすそうだな。

 三人全員が全属性持ちだって言ったら、武器屋のおっちゃん驚いていたな。


 ちなみに美稲はヒールとか担当するって言ってたから、武器は持っていない。お、そんなこと考えていたらギルドに着いたぞ。

「ガチャ。」

「こんにちは。今回はどのような‥‥。ギルド長〜!」

 いちいち呼ばなくていいから。俺達依頼を受けに来ただけなのに。


「ああ、羅人さん達でしたか。で、今回はどのようなご用件で?」

 ギルド長!周りと違って冷静だな。まあいいや。


「俺達は依頼を受けに来たんです。なにかいい依頼はありませんかね。」

 レイパルさんは、自分の机に置いてあったチラシを俺たちに見せた。


「これはさきほど依頼された案件でございます。」

 えっと、何なに、【スライム等のモンスター大量発生!討伐求む!】


「モンスター達が大量発生しているのは、この町の隣の町、そしてこの国の王都、『デレパキラ』の近くの屋敷です。結構大きいです。さきほど一組のパーティがデレパキラから出たと聞きますが、心配なので‥‥」


「わかりました。その依頼、受けます。」

 別に迷うような理由はないし。


「みんなもいいだろ。」

「「「「「「「いーよ」」」」」」

 よし、ドラ達にテレポートしてもらお。俺がやると二人にばれちゃうし。


 門の前に行くとドラ達が待っていた。


「お待たせ。」

「いえいえとんでもない。」

「待たせちゃった上に申し訳ないけど、テレポートをデレパキラまでお願いしてもいいかな。」


「え? あ、はい。」

 お、よかった。ドラも察してくれたようだ。

「テレポート! 」

「一瞬で屋敷の前に?!」

 ネリーが驚いてる。そっか、説明しなかったもんな。


「神獣は、テレポート、テレパシー、その他に一つ、特殊能力を持っているんだよ。」

「そーいうことか」

 納得してくれたみたい。よかった。


「じゃあ屋敷に入りますか!」



 屋敷に入ると、薄暗く、ほこりっぽいにおいがした。

 とりあえず、先に入った一組のパーティーを探すか。


「【サーチ】!」

 お!いたいた。三人だな。三階にいるみたい。何階建てなんだろう。


「どうです、いましたか?」

「王累か。うん。いたいた。三階にいるみたい。」

「今のは何ですか?」

 あ、サーチも紹介してなかったか。


「サーチとは魔法の使用者の半径百メートル以内の、魔物や、生命体の存在を感知できる魔法です。」

 レイカが代わりに説明してくれた。半径百メートル以内っていうのは知らなかったな。そういえば、レイカは俺達のアシストをするためにこの世界に来たのか。忘れてた。


「という事は、ここにいる魔物がどこにいるっていうのも分かるのですよね。その【サーチ】を利用すれば、魔物の討伐が抜群にしやすくなりますよね。」


「そっか!ナイス!マリー!」

 確かに!人を探すためだけに使っていたからきずかなかった。


「そ、そうですかね。」

 また顔を赤くしている。かわいー。


「もー羅人ー。ちゃんとネリーの気持ちを…。ま、いいわ。奥に行きましょ。せっかくならサーチを使わずに行きましょ。そっちの方が楽しそうじゃん。」


「確かにそうだね!マリーちゃんの言う通りだ。じゃ、行こう!」

 俺達は奥へと進んでいった。


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