第5話 情けなくてざまぁねえ

 この世界でオレはだ。


 何せこの世界を創造したのがオレなんだ。神界は勿論のこと下界、魔界にまでその名は轟いている。


 ……なのにこいつときたら。


「ネロスって何の神様なの?」


 何でお前オレの事を知らねーんだよ!


 わざとか? わざとだろ!


 オレを傷つける為にわざと言ってんだろ!


「ラナさん、それ本気で言ってます?」


「うん、本気だよ。1番偉い神様がズミス様なんだよね」


 ちげーよ! エリスだよ!


 色々あったけど今日一きょういちへこんだかも知れない。


 爺より知名度が低いだなんて……。


「ラナ! そこのネロスは知らないが、ネロス様は戦神だ! 世界は何度も何度もネロス様に救われているのだぞ!」


 ……テス……それも間違いだ。


 それはオレじゃない。手下の神々だ。


 俺の信者でもこのざまか。


「ネロス様は戦神であると同時にこの世界の創造神。つまりネロス様が私たちの生みの親」


 お、分かってるじゃないか魔法使い。


「いくら情けなくても親は親……」


 今日一番のへこみ更新。


「なるほど……わかった! じゃあウチらがネロスの老後の面倒みるような感じだね」


「そうそう、娘として避けられない運命」


 こ……こいつら……オレ、怒っていいよね? むしろ泣いていいよね?



「うん、ネロスのことは大体分かった!」


 絶対わかってねー……ラナは中々危険だな。こいつオレに『馬鹿じゃん』とか言ったけどこいつも絶対馬鹿だ。


「じゃぁネロスにウチらのことを紹介しておくよ」


「ああ」


 人間になんて興味はないけど……世話になるんだからな……名前ぐらいは覚えておいてやるか、確か聖女がネイで、ゴリラ女剣士がテスで、バカ女剣士がラナで、魔法使いがサラだったよな。


「ウチらはね『聖女パーティー』と呼ばれているシルバーランク冒険者だよ」


 冒険者……冒険者ってなんだ?


「冒険者は、魔物を倒したり、魔物を倒したり、魔物を倒したりして生活してるんだよ」


 ……さっぱり分からん。


「んで、改めて自己紹介するけどウチはラナ、魔法剣士だよ。魔法と剣が扱えるなんて希少な存在なんだからね」


 ラナ……さらさらストレートのセミロング、そして黒髪。切れ長の目で整った顔立ち。なかなかの美人だ。バカなのがたまに傷だけど。


「私はサラ、魔法使い」


 ショートヘアーに眠そうに見えるぐらいの二重まぶた。可愛い顔してクールなツッコミを入れてきやがる。


「あの入り口の魔法陣はサラがやったのか?」


「え……なんで分かったの」


「オレは神だぞ? 神力が切れてるだけで森羅万象を見分けることぐらいは出来るさ」


「今さらっとすごいことを……」


「ご、ごほん、ごほん」


 テスがわざとらしい咳払いを……こいつ早く自己紹介したくてウズウズしてるのか。


「自分の番だな! 自分はテス。剣士だ! ネロスは私が守ってやる大船に乗ったつもりでいるが良いぞ!」


 テス……見事なブロンドの髪を後ろでまとめている。つか、こいつもよく見ると美人だな。でもゴリラ並みのパワーだしな……こういうのを脳筋って言うんだな。だが、オレの信者だっていうのはポイントが高い。


「最後はわたくしですね」


 にこりと微笑み掛けてきたネイ。


 ……顔はどこからどう見てもエリスだ。


 ゆるふわセミロングのプリティフェイス。


 エリスはピンクの髪だがネイはブロンド。


 エリスは巨乳だが、ネイはそこそこ。


 見た目の違いはそんなもんだ。


「ネロス様、ネイです。一応……聖女をやっておりまして、その……」


 うんなんだ、歯切れが悪いな。


「ネロス様の幼馴染、エリス様の神託を授かることがあります」


 な……なにぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!


「そ……それは、本当なのか」


「はい」


 そうか……なら、ネイに頼めばオレの言葉もエリスに届くのかもしれないと言うことか。


「神託を受ける時、エリスと話すことはできるのか?」


「会話はできませんが、もしかしたら伝えることぐらいは……」


「そうか……」


「何か、お伝えしましょうか?」


「いや、いい」


「そうですか……」


 今は何を話しても恨み節になるだけだ。



「ま、これがウチらディアネ「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」」


 うん? ラナが自己紹介を締めようとしたら、いきなりテスが大声をあげた。何のつもりだ。


「そ、そ、そうだ、この4人で聖女パーティーと呼ばれているんだ」


「テス、それは最初に話したじゃん。それにパーティー名じゃないじゃん」


「だ、だが……」


「いいじゃん」


 何をもめてるんだ?


「私たちのパーティー名は『ディアネロス』決めたのはテス」


「わーっ! わーっ! わーっ!」


 なんだそれでテスのやつ……ガチでオレの信者なんだな。


「ネロスは神力がないと何もできないんだったよね、パシリよろしく!」


「よろしくパシリ」


「不届きものを監視するためだからな!」


「ネロス様……すみませんが、よろしくお願いします」


 釈然としない。


 釈然としないが、何となく神界よりは退屈しなさそうだ。


 しかし、創造主たるオレが……エリスの言葉を賜る聖女のパーティーのパシリをするなんて……本当にざまあねえ。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る