第4話 雑魚扱いされてざまぁねえ
暑い、怠い、辛い、喉が渇く……。
もう、足が棒のようだ。
こいつら、いったいどれぐらいオレを歩かせたら気が済むんだ。
「何してるんだネロス、置いていくぞ」
くそッ、あの怪力ゴリラ女は、どんだけタフなんだよ。
「ネロス様、もう少しです。頑張ってくださいね」
「ああ、ありがとう」
何気にネイもタフだ。
人間の体力はどうなってんだ……まじだりい、帰りたい、歩きたくない。
「おい、おい、おい、まだ一刻も歩いていないのにだらしないなぁ。戦神の名が泣くぞ」
くそっ……痛いところつきやがって。
そもそもオレは、歩くより飛ぶ派なんだよ。
——そしてもう半刻ほど歩いたところで、テスとネイの目的地へたどり着いた。
神力切れに備えて日頃から鍛錬を怠るなと、口を酸っぱくして爺に言われていたけど……ようやくその意味が理解できた。
「ここは……」
「自分たちのアジトだ、さあ、遠慮なく入ってくれ」
アジトって……掘っ建て小屋もいいところだ。
まさかこんなところに住んでいるのか?
——だが、掘っ建て小屋だったのは外装だけで、内装は神のオレから見ても立派なものだった。
特にこの外敵に備えた攻守一体の魔法陣などは見事としか言いようがない。
「ただいま、今戻った」
「「おかえり」」
部屋の奥からやんちゃな感じの剣士の女と、いかにもクールな魔法使いって感じの女が、オレたちを出迎えた。
「あれ、誰その子」
そ……その子だと、オレがいったい何年生きていると思ってんだ。
「彼がオークにボコられているところを自分たちが助けてやった。行くあてもないらしいから、うちのパーティーで面倒見ることにした。いいだろラナ?」
やんちゃな剣士がラナか。
「オークにボコされる……ぷっ」
アイツ、今絶対笑ったよな。
……やっぱり、人間の目からみてもオークにボコされるのは恥ずかしい事なんだな。
「ていうかテス、勝手に決めすぎ。それに色々すっ飛ばしすぎ」
「まあ、そう言うなよサラ」
クールな魔法使いがサラね。
「オークにボコされる雑魚なんか、絶対役にたたない。足手まといなだけ」
くっ……容赦ないな……ハッキリ言いやがる。
嫌いではないが、地味に傷付く。
「でもなあ、もう連れてきたし」
「つーかテス、何でそんな役立たずの雑魚、連れてきたの?」
ラナだっけ……こいつも容赦がない。
「テスさんがネロス様に一目惚れしたのです」
「「一目惚れ?」」
え……そうなの? 信者だからと思ってたけど。
「ち、ち、ち、違うぞ! じ、じ自分がこんな軟弱な輩に……ひと、ひと、一目惚れなんて、するはずないだろ!」
「違うのですか?」
「ち、違う! 違う! 違う! 違う!」
「あれ? テスさん顔が真っ赤ですよ?」
ネイ……こいつもある意味容赦がない。
天然なのか?
「こ、こいつがネロス様の名を
「でも、恐らくネロス様ご本人ですよ?」
「くっ……」
テス……コイツはチョロそうだ。
「待って、貴女たち、さっきからネロス様って」
「あーあー、そうだったな、紹介が遅れた。彼はネロス様を
「え、だってネイがご本人って言ったじゃん」
「ご本人ですよ、ラナさん」
「えーと……よく分からない。もっと詳しく」
「はい、サラさん」
皆んながオレに注目した。
つか『はい』とか、良い返事しといて自分で話さないのかよ。
にっこり微笑んでオレに期待を寄せるネイ。
なんか、そんなところもエリスに似ている。
——オレは請われたもんだから仕方なしに、テスとネイに話したように、ラナとサラにも事情を説明してやった。
驚いてはいたが、ネイがオレをご本人様認定した為か、ラナとサラはあっさり俺をネロスだと受け入れた。
「へー神様が追放ねえ……どんな気分なの?」
「いや……どんな気分ってそりゃ」
何だろう、追放されたのがエリス以外ならムカつくしかありえないんだけど……エリスだからな。
悲しい? 寂しい? 悔しい? 虚しい?
なんかどれもあてはまりそうで、どれも違う気がする。
不安、恐怖、絶望。
これも違う。
「分からない……」
「やっぱり、そうなんだね」
やっぱりそうだと……?
「やっぱりって?」
「だって、ネロス馬鹿じゃん」
ば……馬鹿じゃん……だと。
「馬鹿って!」
「まあ、そんな細かいことはいいじゃん。ウチはラナ、これからよろしくね。ネロス」
「よろしく、ネロス。私、サラ」
細かいことって……お前が聞いてきたんだろ。こいつも神力が戻ったら泣かせてやる。
……釈然としない。
釈然としないが、今のオレはコイツらに頼るしかない。
「よろしく、ネロスだ」
まさか、この世界の創造主たるオレが、人間の……しかもこんな小娘に、いいようにあしらわれてしまうとは……本当にざまぁない。
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