短編

桜

桜というのはどの咲き具合が一番綺麗なのか。

この話題は、どれだけの人に話を聞こうが、どれだけ時間をかけて考えようが一向に答え

が見つかる気がしない。

満開の時がやっぱり一番綺麗だよね。

いやいや咲き始めの蕾と花が混ざっているときが一番綺麗だろう。

いやそんなことはない葉桜が一番風情がある。

聞いたら聞いた分増える意見と思考が、もう一周回って面白い。

というか、もうこの話題で答えを探そうなんて間違ってるんじゃないかと思えてならない

。

そもそも、何が綺麗だの何が一番好きだのなんだのという話題は、完全に個人の趣味嗜好

でしかないのだ。

まあ、ただ綺麗な景色が楽しみたいだけなら小難しいことなんて考える必要はないんだけ

ど。

……この時期は、いつもよりも視線を上に向けてゆっくりと歩いてる人が多い気がする。

いつもならこの時間は、時間に追われて速足でこの道を通っていく人が多いんだけど、こ

の時期だけは、少し雰囲気が変わってくる。

道の片側を覆うように植えられた桜の木。

今はちょうど八分咲きくらいだろうか。

視線をいつもより少し上にあげると、春の訪れを喜ぶように花開く様子が。

少し下に下げると、花から零れ落ちた花弁が地面を覆いつくすように広がっている様子が

楽しめる。

日本人はみんな桜が好き、なんていうけど、あながち間違っていないような気もする。

それこそ、普段はめんどくさがってなかなか外に出ない私が、桜を見るためだけに外に出

ようとするくらいに。

日本は四季折々の花がたくさん楽しめるはずなのに、どうしてか、桜だけは特別扱いで大

切にされている。

まあ、国の花だからというのもあるのだろうが、それでも、この国を挙げて桜の開花を一

つのお祭り騒ぎにするのは、なんとなく面白いものがある。

桜関連の商品が増えたり、桜か関連のお祭りがあったり。

ただ眺めて楽しむだけじゃなくて、こういう楽しみが増えるのは、桜ならではなんじゃな

いか。と思う。

――ちなみに、ここまでなんだかんだ色々言ったが、私は、桜は散り際の儚さが一番好き

だと思います。

散り際の桜って、他の花では楽しめない不思議な儚さがありますしね。