かごめかごめの

最近、ふとした瞬間に思い出すものがある。

あれはいつの話だったっけ。

幼稚園とか、そのくらいのときの、まだ小さい頃のことだった気がする。


『かごめかごめ 籠の中の鳥は

 いついつでやる

 夜明けの晩に 鶴と亀が滑った

 後ろの正面だぁれ?』


小さな子供たちが手をつなぎ、

蹲る一人の子供を囲い円を作る。


輪の中に閉じ込められた

一人ぼっちの鬼の子を囲い

鬼の子を誘い出し、

あの手この手で鬼の子を惑わす


そんな童遊びをする光景。


『××ちゃん、あそんびましょ』


手と手をつなぎ、輪を作る子供たちは

“後ろの正面”に来た子供が代表になり

声を変え、口調を変え、

鬼の子を誘い出す。

決して、声を掛けたのが自分だと、

鬼の子に悟られないように。


『××くん、こうたいしましょ』


なんで悟られてはいけないかって?

それは勿論、鬼の子に悟られ、呼ばれてしまっては

次は自分が鬼の子になってしまうから。


鬼の子の誘いは絶対。

呼ばれたならばその時が最後

次は貴方が鬼の子に。


『かごめかごめ』


輪の中の鬼の子も、必死に探す

自分を誘う子供の声を、必死になって。

必死になって、探し当てる。


『籠の中の鳥は』


だって、

ここから出なければ。

わたしがずぅっと

おにのこなんだから


『いついつでやる』


いつまで経っても帰れない


自分の家に、

自分の居場所に、

元の子供に戻れない


『夜明けの晩に』


一人ぼっちはこわいもの。

夜になれば、いっそうこわい。


真っ暗の中で、一人ぼっち。


『鶴と亀が滑った』


もしここで、誰も私を呼んでくれなかったら?

もしここで、子供たちに騙されて、違う名前を呼んでしまったら?


そうしたら、わたしのかわりの鬼の子は?


それとも、このまま、わたしが、ずっと?

『後ろの少年だぁれ?』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る