Happy Birthday to me.
少しグロテスクな描写があります
『ハッピーバースデー、未来の私』
手首を切っても死ねないとわかっていながら手首に冷たい刃を押し当てる。
ぐっとカッターを握る手に力を込めると、真っ白で綺麗と褒められた手首にプツリと赤い硝子玉の様な紅が浮き出てくる。
ツーっと手首から零れ落ちてくる赤を見ながら悲しそうに、嬉しそうに、泣きそうに、苦しそうに、優しく、笑う。
痛くはないか?
なんでそんなことを聞くの?
だって、念願叶ってのことだろう?
そう。それならいいわ。答えてあげる。
痛いよ、痛い。ひりひりする。
想像していたよりも、ずっと痛いの。
自分の中で作り出した声と、そんな不毛なやり取りをしながら、少し手に込める力を強める。
死ねないとわかっていながらも、流れる血の見たさにカッターの刃をずらし、また新しく線を作る。
私の手首がとても綺麗だと褒めてくれたあの子は、この赤を見たらなんていうだろうか。何を思うだろうか。
そんなつまらないことを考えてしまうけど、今はそんなことはもう関係のないこと。
この赤が流れてくれたおかげで、私は新しく生まれ変わることができる。
次の私は、劣等生なんて呼ばれないといいなぁ。
できれば、あの子みたいに。
自然と周りに人が集まってきてくれるような。
そんな、人間になりたいなぁ。
『ハロー、私。ハッピーバースデー未来の私。ありがとう私。そしてさようなら』
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