落ちて、堕ちて。
Down Down Down. Alice went down a big hole.
アリスが穴へ落ちていくように、彼は日常から非日常へと真っ逆さまに堕ちていく。
その2つの物語はほとんど同じものだがただ1つ、決定的に違うところがある。
穴へ落ちた先でアリスを待つのは楽しく愉快な不思議の国だが、彼が落ちた先で待つのはどこかが致命的に、歪に欠けただけのただの“日常”だということだ。
アリスが白兎を見つけてしまったのがきっかけのように、彼が『彼』を見つけてしまったのが、彼の物語の始まりだった。
白兎を追ってアリスが不思議の国の奥の奥へと迷い込んでしまったように、彼は『彼』を追って日常に潜んだ地獄の奥底へと迷い込んでいく。
アリスは夢から覚めて無事に物語をハッピーエンドで終えることができたが、彼にはそれが難しいだろう。
なにせ彼が迷い込んだのは夢の中の不思議の国ではなく“日常”という逃れることのできないものの延長線上にある地獄なのだから!
Down Down Down. Alice went down a big hole.
これはただの人間でしかない彼と、その友人である『彼』の物語。
歪で腐って淀んで寂滅してそれでいて不思議で少し愛好の混じった物語。
完璧に完成させられたハッピーエンドで終わる物語を好む方はどうぞあちらへ御着席ください。愉快な仲間たちが凄惨な物語を見なくてもいいようにと楽しいお茶会を開いてくれるでしょう。
歪に欠けた不完全な物語でも構わないという方はどうぞお手元の物語のページを捲ってください。不死者の『彼』とただの人間でしかない彼が、きっと貴方を快く自らの日常へと招き入れてくれるでしょう。
それでは、私はこの辺で。
どうぞ、物語をお楽しみくださいね?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます