無題
冷たい風が頬を刺す。
だんだんと暖かくなってきたとは言えど、この時間に外に出るのは流石に寒い。
がらりと背後の窓を開け、一度部屋の中へと戻ると、放り投げてあったパーカーを羽織り、ベランダに戻る。
片手に持ったスマホは部屋の中に置いておこうかな、と思ったのだが、どうしても手放せなかった。
数時間前に送ったメッセージ。
もう夜も更けてきた時間だし、既読が付かないのは仕方ないな、と思いながら送ったけど、やっぱり不安になってくる。
こんなことしてるの、女々しいし重いよな、なんて自己嫌悪が湧いてくるが、どうしてもあいつのことになると弱気になってしまう。
メッセージに既読がつかないのは、ただたんに見逃しているだけなのか、それとももう寝てるのか、それとも……と、ここまで考えたところで、どんどんと悪い方向へと向かっている思考を断ち切るように頭を緩く左右に振る。
気持ちを落ち着けようと冷たい空気を肺に詰め込むが、吐き出すときには拭いきれない気持ちが押し勝って溜息になってしまう。
数分間、ぼーっとしていたが、落ち着かずにスマホを開いてしまう。
が、メッセージアプリのトーク画面は、依然変わらず自分が送った既読のつかないメッセージが一番新しいまま。
『時間があれば少し話したい』
寂しい、という言葉は、文字だとしても自分の外に出すと泣きだしそうで送れなかった。
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