大学編 第51話
時は遊園地にて水無瀬さんがどうすると問い掛けたときに遡る。
水無瀬さんが二人で遊園地デートするか、さらに親密な男女の関係になるか問いかけてくる。俺は迷うことなく
「俺は蛍の所に行くよ。多分、蛍はカーテンも閉めたままで部屋の灯りもつけずにひとりで泣いていると思う、そんな蛍を放っておけないからな」
そう俺が水無瀬さんに伝えたら、水無瀬さんは少し切なそうな表情をしたが
「……うん!それでこそ睦月君だね!」
そう笑顔で言ってくれた。
「……本当にこれで良かったんだ。もし、私の想いが叶っても、大切な友人を失うし、私が居なくなった後に睦月君が辛いだけなんだから……」
「水無瀬さん……」
俯いてそう言う水無瀬さんが泣き止むまで待っていた。
「……睦月君、早く蛍ちゃんの所に行ってあげて」
「いや、きちんと水無瀬さんを送るよ。また調子が悪くなったら不味いからな」
そう言ったら水無瀬さんは「ごめんなさい」と顔を曇らせ
「……実は立って歩くのが辛そうなの」
どうやら色々あったショックで調子を崩してしまったようだ。
「だから、最後のお願いしてもいいかな?」
水無瀬さんはいたずらっ子のように笑ってそんなことを言った。
☆☆☆☆☆
「へへっ、凄い、凄い。睦月君!駆け足!」
「いや、走らないからな」
歩くのが辛いという水無瀬さんのお願いというのは、俺におんぶして欲しいということだった。若い男女がそんなことを真っ昼間っからしてると「あらあら、うふふ」みたいな目で見られて恥ずかしいこと限りなしだ。
「なぁ、病人なんだからおとなしく運ばれたらどうなんだ?」
「ええーっ!?こんなシチュエーションは最初で最後なんだから!楽しませてよ!」
「本当は歩けるんじゃ……」
「えいっ!」
水無瀬さんがギュッと首回りを抱き締めてくる。こっ、これは!?
「ふふふ、睦月君。我が軍はお胸のサイズに関しては蛍ちゃんが遠く及ばない戦力を保有しているのだよ!」
「そ、そんな、ものに俺は屈しないぞ!?」
「睦月君、女の子は男の子の視線がどこを向いてるか察することができる生き物なのだよ?」
「お、お願いですから、蛍には黙っててくださいぃ……」
仕方ないだろう!?揺れるものに視線がついつい向いてしまうことがあるのは男の性なんだ!!
「ふふ、それじゃ、これは私と睦月君だけの秘密ね、そら駆け足!」
「は、はい!」
いつもの調子を取り戻してきた水無瀬さんにからかわれながら走っていたら
「ねぇ、睦月君。やっぱり蛍ちゃんの方が可愛い?私にはそんなに魅力ないかなぁ」
そんなことを聞いてくるので
「いや、水無瀬さんはとても魅力的だと思うぞ。美人だし、明るくて性格も良いし。蛍と出会う前ならきっと水無瀬さんに惹かれていたと思う」
「ふっ、ふうん……ま、まぁ当然だよね!」
どうやら俺の背中で照れているようだ、じたばたしている。危ないからおとなしくして欲しい。
「あーあ、私の野望は潰えるのかぁ……」
「ん?水無瀬さんの野望ってなんだ?」
「それはねぇ……ふふ、好きな男の子とデートして、キスして、あとは……素敵な一夜を過ごして、その後、一緒にお風呂に入ったり?」
「……そうか」
「一緒にお風呂だけでも入ってく?エッチしないで良いから」
「……駄目です」
無理だ、一緒にお風呂に入って我慢するなんて!そこまで俺は枯れてない!
「蛍ちゃんはいいなぁ、睦月君と一緒にお風呂に入って」
「それは仕方ないだろう?」
「そうだけどさぁ……何か良いアイデアはないものかなぁ……」
「はい、はい」
「うーん……まぁ、後で考えよう。とりあえずはひとつだけ」
水無瀬さんはそう言うと俺の頬にキスをしてきた。
「お、おい!」
「ふふ、今日のお礼。あ、きちんと蛍ちゃんの所に行く前に拭いてね?口紅が残ってるから」
「まったく……水無瀬さんは」
「はは、ごめんね、睦月君!」
こんな風に途中までは元気だったのだが、いきなり辛そうになったので水無瀬さんの携帯で真木さんに連絡をとり、病院まで連れていき、落ち着くまで様子を見て、結局、病院を出たのが夜になっていた。そして、その後に蛍の自宅を訪問したのだ。
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