第105話


 クリスマス当日は休みが取れなかった、蛍に申し訳ないと謝って


 「クリスマスイヴの前日で良ければ日帰りで行けるが……蛍の予定はどうだ?」


 『塾の冬期講習が昼間にありますが……その後なら会えます。でも先輩、大丈夫ですか?お疲れなのに……』


 蛍は心配してくれたが


 「……俺が会いたいんだ。駄目かな?」


 と答えたら


 『私も会いたいです……お待ちしてます』


 と蛍も言ってくれたので俺はあの街にこっそりと戻った。


 寂れた喫茶店で時間を潰し、蛍の塾が終わる時間を待つ。


 「お待たせしました、先輩」


 と蛍が塾を終えてやって来たので


 「久しぶり、あまり時間もないから……行こうか?」


 「……はい」


 俺と蛍は去年も二人で見に行ったイルミネーションを今年も見に来た。手を繋ぎ、ゆっくり歩く。そしてイルミネーションを見終えて……


 「……終わっちゃったな、蛍、家まで送るよ」


 「せ、先輩っ…………二人っきりになれる所に行きませんか?」


 蛍が顔を赤らめて小さな声で……ホテルに寄ることを提案してくるが


 「……ちょっと時間も無さそうだし、今が蛍にとって大事な時期だから……やめておこう」


 「……はい」


 まだ高校生の蛍がホテルに出入りしてるところを知り合いに見られたら問題になってしまうかもしれないと諦める。


 少し俯く蛍を抱き寄せ、蛍の耳元に顔を近付け


 「……春にこっちの街に蛍がやって来た時には……一晩中可愛がってあげるから……ね?」


 「……は、はい……」


 蛍の耳元に囁く、実は蛍は耳元で囁かれるのに弱い。そんな蛍の感じてしまう所を知ってるのはこの世の中で俺だけだという喜び。他には背中も軽く触られるのに弱かったり……きっと蛍も俺の弱いところを知ってて……それを知ってるのも蛍だけなんだろう。それは嫌なことじゃなかった。


 「さぁ、送るよ」


 蛍と手を繋いだまま去年のクリスマスの時のように帰り道を行く。


 コートの胸ポケットに入っているプレゼントの箱が出番を待っていた。


 

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