第97話


 今日は俺の家で神宮寺と飲んでいる。もう神宮寺の家には行かないと宣言したからだ。


 「……うちの女達は……ちょっとそういうことにオープンなんだ……」


 やまいだれに知ると書く女なのでは?と言う言葉は酒と一緒に飲み込んだ。流石に友人の母親と妹をそう呼んでは可哀想だ。


 「……なぁ、神宮寺が女性が苦手なのってひょっとして……」


 「……まぁ、そうだ」


 敵は本能寺ではなくお家にいたのか。デリケートな少年の時に下のことを身内に弄られまくって軽くトラウマになってしまったようだ。勿論、それだけではなく昔から神宮寺家は女性が強い家なのだと言う。


 「……なぁ、うちの女達がまたお前を連れてこいって五月蝿いんだが……」


 「行かないから」


 「……うん、そうだよね」


 あんなおっかなそうな女性達がいる家には行きたくない。


 まさか、神宮寺並みに強そうな気配を漂わせる女性が二人もいるなんて思わなかった、俺は真っ平御免だ。



 ……そう思っていたのだが後日、本当に偶々、街で神宮寺の妹に出会ってしまった。見た目だけなら大和撫子的な美少女なんだが……


 「ご機嫌よう、大きなお兄様」


 「……神宮寺の妹さん、俺は君の兄ではないのでお兄様と呼ばれても困るのだが……」


 「ふふ、実のお兄様は『小さなお兄様』と呼び分けているので問題ないですよ?」


 ……何の大小で呼び分けているのかとてもじゃないが聞けなかった。だって何故か俺の下半身を見ながらの会話してるんだもん、この子。


 「そういえば自己紹介が遅れました、私は神宮寺紅花(じんぐうじべにか)と申します、お見知り置きを」


 一応、こちらも自己紹介を改めてして……直ぐにでも逃げ出したいと思っていたら


 「……どうか私のお兄様の事をよろしくお願いいたしますね」


 とそう頭を下げた。


 「……お兄様は神宮寺の家に縛られている所がありますので……」


 「……やはり、古来よりの武術を代々伝える家には裏の面もあるのかい?」


 「……昔からのお付き合いで……綺麗事だけでは済まない面もあるんです……お兄様にはこのお話の事は内緒ですよ?」


 「……神宮寺には言わないさ、それじゃ」と言って帰ろうとしたら


 「……大きいお兄様とはまたお会いしたいですわ」


 と紅花さんは顔を赤らめて言うが


 「……済まない、俺には心配性な彼女がいるので他の子とはなるべく接近しないように心掛けてるんだ」


 と御断りした。


 「……本当に残念です、それではご機嫌よう」


 と言って紅花さんは去っていった。最後まで下半身を見ながら会話するのは止めて欲しかった。


 



 

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