第84話


 蛍の学年末試験も終わり、俺が旅立つまでの残りの日々をどう過ごすか……とりあえず今日は二人で愛の共同作業をして過ごすことに決めた。


 「……という訳でクリアしてないゲームを二人協力して終わらせよう!」


 「……はい」


 愛のパワーは偉大だと聞いたことがある。そう、俺がクリアしたことのない『ド○ゴンボール 神○の謎』だって、『ト○ンスフォーマー コ○ボイの謎』だって愛の力があればクリアできるはず!


 蛍の作ってくれたお昼御飯を二人で食べ、ジュースやお菓子を並べ、二人仲良く頑張った……頑張ったんだけれども……


 「……もう駄目だ、ガッツが足りない……」


 無理なものは無理だった。もう降参と床に寝転がる。


 「……ありがとう、蛍。ファ○コンの世界は奥深い……これはクリアできる奴いるのだろうか?」


 「……二人同時プレイできるゲームをやりましょう、それなら二人の愛のパワーが炸裂するかもしれません」


 ……蛍の方がガッツがあったようだ。ゴールデンコンビの片割れとして負けてられないと起き上がる。


 「……そうだな、頑張ろうミサキ君!」


 「……蛍です。先輩、ミ○キってどこの女ですか?」


 って蛍が俺を睨むが


 「……蛍こそ何を言っている……ミサ○君は男だぞ?」


 まさか知らないとは……確かに俺達の世代ではないとはいえアニメ、漫画好きなら基礎知識だと漫画原作のサッカーのファ○コンソフトを蛍に渡しプレイさせ、きちんとおフランスでミ○キ君を探させた。


 そんなことをやっていたらあっという間に夕方になる……


 暗くなるのが早いなと話しながら蛍を自宅まで送る。


 「明日もお休みなので遊びに行って良いですか?」


 と尋ねてきたので「待ってるよ」と答える。手を繋ぎながら歩く夕方の寂しげな雰囲気から少し昔のことを蛍に聞いて貰いたいと思ってしまった。


 「……蛍、俺は小さな頃……ゲームなんて買って貰える環境じゃなかったんだ……」


 蛍は俺を見つめ黙って聞いてくれる。


 「……そんな生活から叔父さんに世話になる生活に変わり、叔父さんが自分が昔やっていたゲーム機を譲ってくれて……初めてゲームに触れたんだ」


 「……」


 「……叔父さんに『新しいのを買ってやろうか?』って聞かれたんだけど『これがいい』って俺は言って……」


 「……」


 「……こんな面白いものがあるのかって感動したけど、俺の周りの男子達はこんな古いゲーム機じゃなく最新のゲームをやってるし、うちの家庭環境を知ってる親御さんから『俺には関わるな』って言われてるし……一緒にやる相手はいなかったんだ……」


 「……」


 「……だから蛍が一緒に遊んでくれて……凄く嬉しかった」


 「……私も先輩と遊ぶの楽しいです、これからも一緒に遊びましょう」


 「……ありがとうな」


 蛍の自宅が見えてきたというところで手を離し


 「また、明日伺います、明日もゲームしましょう」と蛍が言うので


 「……蛍、明日は別の……共同作業じゃだめかな?」


 と蛍の頬に軽く触れ、お願いしたら「……先輩のエッチ」と小さな声で言ってから


 「……いいですよ、ではまた明日」と蛍は笑って家に入っていった。


 そういうわけで俺の帰り道はドラッグストアーに寄るため遠回りをした。



 

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