第80話
……突然、蛍がやって来た。
「どうした?何かあったか?」
最近は勉強の邪魔をしないようにと気を遣ってあまり来なかった蛍が突然訪ねてきた。
「……まだ冷凍庫に蛍の作ってくれたご飯はあるぞ?」
レンジでチンすれば食べられるように蛍が作ってくれたオリジナル冷凍食品がある。
「……先輩、これを受け取ってください」
紙袋に入ったら何かを渡してきた。何だろうと思って取り出してみたら……チョコレートだ。
「……そうか、今日はバレンタインか」
忘れていたよ。これまで無縁なイベントだったしな。
「ありがとうな、少し上がってお茶でも飲んでいきなよ」
「……それでは少しだけ」
「開けてもいいか?」と蛍に確認して許可を貰ってからチョコレートの包装を開ける。中には手作りだと思われるチョコレートが八個入っていた。
「……蛍、これはひょっとして手作りか?」
一応聞いてみたら「はい」と頷くので
「……凄いな、チョコレートの原料はカカオなんだろ?一体どうやって作るのか俺には想像もつかないよ……」
そう言ったら蛍は微妙そうな表情をして
「……先輩。普通、バレンタインに贈る手作りのチョコレートは市販のチョコレートを湯煎で溶かしたのを固めたものなんです……」
「……え?なんでわざわざ完成しているものを一度溶かしてから固めるの?」
そう言ったら蛍は更に微妙そうな表情をした。あれ?これは俺が間違っているのか?
「……すまん、チョコレートなんて貰うことがないから流儀がわからないんだ……」
「……いえ、私は気にしませんが他の方にそんなことを言ったら怒られるかもしれません……」
とりあえず一つ口の中に入れる。うん、甘い……普通のチョコレートだ。俺には安い板チョコと高級チョコレートの味の違いがわからない舌なので甘い、美味いとしか言ってあげられないのが申し訳ない。
「……先輩は他の方から貰ったりしないのですか?」
「俺にチョコレートをくれる女の子なんて蛍以外いないだろう……」
蛍は「……そうですか?そんなことないと思いますが……」と言っていたが今まで貰ったことないしな。
蛍のチョコレートをいただいて少し話したら「それではそろそろ帰ります、二次試験は10日後でしたっけ?勉強頑張ってください」と蛍は帰っていった。
ホワイトデーのお返しってお菓子の種類によって意味があるんだっけ?調べておかないと。
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