第74話


 「先輩、ただいま戻りました。これはお土産です」


 「おかえり、蛍」


 蛍が修学旅行から帰って来た、そして旅行のお土産を持って俺の家に遊びに来た。

 勿論、会った早々に俺の家の中でハグ&キスは挨拶なので行う、家の外ではやらないけど。俺は何を言われても気にしないけど蛍が何か言われたら可哀想なので人の目は気にしている。


 「……先輩、きちんとご飯食べてましたか?」


 「……大丈夫だよ、蛍の作ってくれたご飯を温めて食べてたよ」


 「美味しかったよ、ありがとうな」と伝えたら蛍は「……今度は作りたてのを食べていただきますから」と言っている。


 「……先輩、寂しくなかったですか?」


 蛍がそんなことを聞いてくるので


 「……俺には蛍の写真があるからな、蛍に会いたくなったら眺めてたよ」


 そう答えたら蛍は顔を赤らめて何かむにゃむにゃと言う。


 「……蛍、何か言ったか?」


 「……イエ、ナンデモナイデス……ナンニモモンダイナイデス」


 ……蛍は何かむっつりとした妄想をしている気がする。俺が蛍の水着姿を見ながらソロ活動していたと思ってるんだろうな……そんな水着姿を見たからといって毎回しないわ。でも絶対しないとは言えないので……蛍のその妄想は壊さないでおこう。むっつりな妄想してる蛍も可愛いぞ。


 「……そう言えば班のメンバーとは仲良くなれたのか?」


 「……はい、連絡先も交換しました」


 「勿論、女の子だけですよ?」と俺が気にしないように蛍は付け加える。蛍に友達ができたようで何よりだ。


 「……女の子同士で色々なお話もできて楽しかったです……」


 「それは良かったな」


 その時はそう言ったのだが……後日、蛍のクラスメートの女の子達が以前は俺のことを恐ろしいものを見るような眼差しだったのに、修学旅行以来、俺の顔を見たら顔を赤らめて逃げるように離れていくのは何故だ!?そして女の子同士でこそこそ俺の方を見てキャーキャー言ってるのは何だ!?


 ……蛍さん、あんた何をガールズトークで言った?


 ……でも何を言ったのか……怖くて聞けない。

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