第73話


 三日後に蛍の学年は修学旅行に出発する。そんな蛍は自分の旅行の準備をするでもなく……


 俺の家で蛍が旅行でいない間の俺の食事を作ってせっせと冷凍庫に入れている。


 「……私がいないと先輩がちゃんとした食事を食べてるイメージが湧かないですから」


 そんなことを言って俺でもレンジでチンすれば食べられるように準備してくれている……蛍は嫁と母の三位一体だったのだろうか……


 「……蛍よ、俺の嫁になれば世界の半分を蛍にやろう」


 「世界の半分はいらないので机の上を片してください」


 「……はい」


 机の上を片したら蛍が俺の食事を並べてくれる。今日は親子丼、卵トロトロだ。


 「いただきます」


 蛍に感謝して食事をしながら蛍に修学旅行のことを尋ねてみる。


 「この前の文化祭で一緒にいた子達と同じ班になれたのか?」


 そう尋ねたら「はい」と答えたので修学旅行も大丈夫だろうと一安心した。修学旅行中に話す相手もなく一人で過ごすなんてキツすぎるからな。


 「……先輩、私がいないですけど大丈夫ですか?」


 ……あれ?俺の方が蛍に心配されてる?


 「俺は大丈夫だから楽しんでおいで」


 「はい、でも心配です……」


 ……そんなに心配されるほどひどいのかな俺……ずっと一人暮らししてるんだけど。


 ……最近の食事は相当、蛍に頼ってはいるけどさ。


 蛍を眺める、ちょこんと座る小柄な可愛い女の子。料理は上手で性格も穏やかで優しい。そしてあちらの方も俺の要求にその小さな身体で応えようとしてくれて……


 やっぱり最高の嫁だなぁ。


 でも、俺は金無いしな……母親の残してくれたお金で進学の足しにするから残金は零で……残るはこの身一つだ。


 「……蛍、俺には財産もないから苦労させるかもしれないけど……恋人でいてくれるか?」


 「……先輩、もう先輩は責任を取って私をお嫁さんにしてくれなくちゃいけないんです……あんなことしたんですから」


 そう言って顔を赤くして俯く……あんなことって……まぁ、したかも。


 「……それに、私も頑張りますから……二人で幸せになりましょう。勿論、一緒にいるだけでも幸せなんですけど……」


 そうだな、蛍の幸せの為に身を引くなんて考えるのは止めたんだ。言った言葉に照れている蛍に提案をする。


 「……蛍、飯食って歯を磨いたら修学旅行で会えない分もキスするから、これは不足する分だから今のうちに数も量も稼いでおかないと」


 ……蛍との甘い時間は我慢するはずではなかったのかって?


 キスとハグは挨拶の一環だからエッチな行為にはカウントされないんだと俺が力説したら蛍も


 「……そうですね。勿論、キスとハグは挨拶に含まれます」


 と言ってくれたので問題ない。全ては俺と蛍の為の詭弁的ご都合主義だ。

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