第5話

 冷たい雨がアスファルトを濡らしていく。太陽が一切見えないどんよりとした空は俺の心を表しているようだった。

 そう!なぜか日曜の朝から傘もささずにビルとビルの間に隠れている俺の心をな!!

 どこかで雷が鳴った。


 今朝、四時ごろに「連絡が入りました。行きますよ」と起こされたとき、俺のテンションは高かった。何故、日曜日にこんな時間から出掛けなきゃいけないんだ、なんて文句はもちろん言わない。なんたってヒーローのサポートだ。忙しいに決まってる。

 少しかっちりとした服に着替えようとした俺にダメ出しをしてきたアイツが、わざとらしく呆れた顔をしていたって何とも思わなかった。

「やる気あるんですかぁ?もっと動きやすい恰好にしてください。ジャージとかがいいですよ」

 なるほど。服は自前ってことか。にしてもジャージか。もしかしたらヒーローに武器を届けたりもするのかもしれない。

「ああ、わかった」

 俺は、手持ちの中で最もカッコイイ黒のジャージに着替えた。


 着替えをした俺は朝ご飯も食べずに急いで家を出た。車は持っていない。ここはそこそこ都会なのだ。カッパを着た俺を案内するコイツの(傘を持ちふよふよと浮いている)姿は俺以外には見えていないようだった。色々と聞きたいがそれどころではない。一刻も早く組織に行くため俺は走っているのだ。ちょっと、いや、かなりしんどいが仕方がない。組織の人を待たせるわけにはいかないからな。

 「ここです」

 ヤツが止まったのはくたびれたビルの前だ。横にも前にも古そうなビルが建っている。

 ちょっと予想していた感じと違う。が、そうかフェイクか。敵に見つかったら大変だもんな。

 いよいよか、と中に足を踏み入れようとした俺のフードをヤツが引っ張った。

「ぐえっ。何するんだよ!」

「こっちのセリフです!何しようとしてんですか。とっとと隠れてください」

 そう言ってヤツが指さしたのは向かい側のビルとビルの隙間だった。


 あれから三十分、俺はビルの隙間で立っている。

 ええーと、どういうプレイです??

「なあ、いつまでこうしてればいいんだ……?」

 ヤツはどこからか(家から勝手に持ってきたであろう)プロテインバーを取り出して食べ始めながら言った。

「うーん、はいってはいるんですけどねぇ。へっていにじかんがかかっているのでひょうか」

 コイツ設定って言わなかったか?

「おい、どういうk「ひまひたぁ!」

 ヤツの目線の先には、まさに今、ビルから出て来んとする青年の姿があった。

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