第4話
「ヒーローってあれか?『皆の平和は俺が守る!』みたいな素晴らしい心意気の奴」
「ええ、まあそんな感じです」
「ほんとにいるんだな、そういうの。ていうか、担当ってどういうことだよ?」
「ざっくり言えば、ヒーローがヒーローらしく活動できるようにサポートする役割をお任せしたいということです」
「ああ、なるほどな」
少し話が見えてきた。戦隊モノにはよくいる。戦いの場には行かず、組織の本部なんかで情報を伝えたり指示を出したりする役割。ああ、ちょっといい。コイツはそんなそぶりを見せないが、実は俺は選ばれし者だったりするのかもしれない。
「いつから始めるんだ?」
「いつでしょうねぇ。今週末ぐらいじゃないですかね」
そんなんでいいのかよ。てきとーじゃねえか。
まあ、週末なら仕事に支障もなさそうだしいいか、なんて考えながら俺は支度をした。
「守屋さん!このままではやられてしまいます!!」
「今弱点を探っている!」
ああ、くそッ!なぜ俺は予想できなかったんだ!!
誰もが想定していない事態だった。倒したと思った敵が起き上がるなんて。第二形態といったところか。先程までとはパワーもスピードも違いすぎる。ヒーローの攻撃も、その硬い体ではじかれてしまう。
「頼むッ。もう少し耐えてくれ!」
キーボードの音が耳障りだ。俺の指はこんなに遅くしか動かなかっただろうか。
「ヒーローの体力ゲージが赤ですッ!!」
報告の声も半分悲鳴だ。
「守屋さんッ!どうすれば!!」
「落ち着け!」
彼に……いいや、俺たちにかかっているんだ!この世界の未来が!!
「あきらめるな!!!」
「でもッ……!」
アラームが鳴り響く中、俺は声を張り上げた。
「出た!!奴の弱点は――」
目を開けると視界に広がるのは白い天井。それは、病院の天井などではなく、見慣れた自分の部屋の天井だ。要するにさっきのは夢だった。俺は自分が思っている以上にヒーローのサポートとやらを楽しみにしているらしい。
先程の夢はもしかしたら予知夢なのかもしれない、なんて考えながら着替えを始めた。今日はついに土曜日だ。一応のことも考えて、いつもよりカジュアルでないものにした。組織に行くかもしれないからな。組織のコスチュームがある可能性もあるが、第一印象は大切だ。
着替えを済ませたところで、テーブルの下で寝ていたヤツが起きてきた。ピンク色のパジャマを着てナイトキャップまでかぶっている。(ちなみにヤツが布団にしているのは、俺が開けずにとっておいた貰い物のタオルだ。どこまでも図々しい奴である。)
「いつ出ればいいんだ?」
「何をです?」
「家に決まってるだろ。ヒーローのサポートに」
「連絡が来てからですよ」
「ふぅん」
少し残念だ。待機命令でも出ているのだろうか。きっと組織は忙しいんだろうな。いつ敵が現れるのかわからないだろうし。
この日は結局家を出ることはなかった。
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