エピソード3 児童刑務所 リーダー:アーサー
アーサーの場合
「「きょうのリーダーだーれだ!じゃんけんぽん!!」」
「よっしゃあ!!きょうは、オレサマがリーダーだぜ!!」
アーサーが拳を突き上げて、特大音量で叫んだ。
「アーサー、うるせー!」
「アーサーがリーダーとか、ろくな遊びしねーな」
「また、まけちゃった……」
負けた3人は、バラバラに文句を言う。
アーサーがリーダーになった時の恒例だ。
「うるせぇ!オレサマのいうことをきけ!」
アーサーは地団太を踏むが、すぐ得意げな顔をして
「きょうやることは、“まとあてゲーム”だ!!」
宣言した。
「「つまんなそう」」
3人が一斉に首を振る。
「なんだと!おもしろいって、いえ!
“リーダーのいうことは絶対”だぞ!」
再びアーサーがジタバタ暴れるから、
「「わー、おもしろそーう」」
声をそろえて、棒読みした。
アーサーはすぐに機嫌を直す。
「ルールは、石をなげて、まとにいっぱいあてたやつがかち!」
「つまんな」
メゾッドがつぶやくとアーサーがメゾッドを睨む。
メゾッドは対して怯えた様子もなく、
「オモシロソーウ」
と繰り返した。
アーサーは上機嫌に、続ける。
「じゃ、あさメシのあとなかにわにしゅうごうな!」
朝食の後、中庭。
「よし、オレサマからはじめるぜ!」
アーサーの足元にこんもりと小石が積まれている。
「それじゃあ。よーい、スタート!」
フレアの掛け声でアーサーは思いきり石を投げた。
「痛っ!」
「やったぜ、1ポイント!」
続けて、“的”に向かっていくつも石を投げていく。
「痛いっ」「投げてくんじゃねーよ!」
石は、次々に“的”――他の部屋の子供に当たる。
体はどこでも1ポイント。頭は2ポイント。
そのうち、“的”からも石が飛んでくるようになる。
「そーいや、これ、いつまですんの?」
メゾッドが呟いた時、高得点の“的”が来た。
ショクインが気だるそうに、中庭に現れたのだ。
ショクインの体ならどこでも5ポイント、あたまなら、10ポイント。
チャンスとばかりに、アーサーが石を投げた。
とっておきの、少し大きくてゴツゴツした石。
それはまっすぐ飛んでいき、後頭部に当たった。
「やった、10ポイント!!
オレサマのかちだ!」
ガッツポーズをして、3人を振りかえると、メゾッドとフレアはお腹を抱えて、ゲラゲラ笑っていた。
ミズノトだけ目を見開いて、ブルブル震えている。
「なんだミズノト、ビビってんのか―?」
「そ、そうじゃなくて、う、うしろ……」
ミズノトが指さした方を振り返ると。
額に血管が浮き出たショクインが、大股で、アーサーに近づいてきていた。
その日の遊びは、的あてから鬼ごっこに移行した。
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