FGO

 男にはどうしても欲しいキャラがいた。


 すでにクレジットカードは限度額を迎え、仕方なくコンビニでアップルカードを購入していたが、次の給料日まで毎日のメシは塩パスタに確定している。

 しかし、ここまで一向に当てることができないでいた。


 もはや幾度も目当てでない星5サーヴァントを引き期待を裏切られ続けている。

 ショックによるものなのか気が触れてきたのか、眩暈がする。

 そして、生気のない指先で震えながら召喚ボタンをタッチする。


 虹色の演出……!これはついに報われるときがきたのか……?

 しかし、当たったのはまたもや恒常のサーヴァントであった。

「へへっ、へへへへへへへへへ……!」

 焦点の合わない目をしたまま彼はベッドに倒れ込んだ。


 残る星晶石はちょうどあと10連1回分。もうこれ以上は本当に現金がない。

 彼は絶望の淵にいた。やがて目の前が暗くなり始め、気付けば真っ暗闇にいた。


「俺にお似合いの場所だぜ」

 彼は自嘲した。もう引ける気がまったくしない。この世にはどうにもならないことがある。男にだって諦めなければならないときもある。この世界は灰色なのだ。


 だが、そこに灰色の暗雲を引き裂くような激しい稲妻が走った。彼に一筋の光明が見えたのだ。

「そうだ……!俺があいつを欲するのは愛でるため、いや……シコるためだ!!だったら、引くのは指じゃない。俺のチ〇コだ!!!!!」


 気が付くと周りの景色はいつもの自室に戻っていた。

「そうと決まればまずは身を清める必要があるな」

 彼はまず、入浴して入念に体を洗った。もちろん彼のイチモツも恐ろしく丁寧に洗った。

 そして、入浴を済ませた後は歯を磨いた。服もアイロンしたてのものを着た。

「そうだ。体から汚物はすべて出し去る必要がある。便になるのは2日後と聞いたことがある。このまま2日絶食しよう」


 だが、彼の中のもう一人の彼、天使の彼がそれをたしなめる。

「ダメだよ!ピックアップされるのは今日の12時までだよ!!!今日中に引かないと!!」

「おっとそうだったな。危ない危ない」

 だが、もう一人の彼、悪魔の彼が囁きかける。

「このまま引くのを忘れたほうが幸せなんじゃないのか?気持ちはわかるが、冷静になれ」

「なんてことを言うんだ!!ここまでの僕の苦労を無駄にするつもりか!!!」

 天使の彼がすぐさま反論した。

「だが、人生引き際が重要だって言うじゃないか」

「うるさいうるさいうるさい!!!」

 天使と悪魔は喧嘩を始めた。だが、それを彼は一喝した。

「うるせえ!!!!次で当てればいいんだろ!?やってやるよ!!!!」


 いよいよ彼の最後の勝負のときがやってきた。

 彼は今までの人生でしたことがないような綺麗な姿勢の正座をして、スマートフォンに向き直った。

 そして、目にも止まらぬ早業で勢いよく全裸になった。あまりの興奮に上半身からは湯気を発しており、武者震いを起こしている。


「いける……ッ!力がみなぎって俺のチ〇コに力が集まってくるのがわかる……!今ならこの空間のすべての流れが手に取るようにわかるぞ……!!!」

 一度目を閉じて深呼吸をし、目を見開きながら叫んだ。


「いくぞ!!!トレース・オォォォォォン!!!!!」


 彼のイチモツがスマートフォンの画面に触れ、ガチャを引くボタンに直撃したとき、彼はこの世の理を悟った。そして、そこには天使も悪魔もいなかった。彼は神を見たのだ。


「来いィィィィ!!!!俺のアーチャーァァァァァァ!!!!!!!」


 煌めくような金髪にデレたときの興奮を増長させるためにあるかのような普段の高慢っぷり。目当てのサーヴァントはついにやってきた。

 こうして、彼は念願のサーヴァント、ギ〇ガメッシュを引き当てることができたのだった。

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