関西の風


 前もって相談もせずに仕事を休むことなどあり得ない。夫婦の絆を取り戻す、なんとしても。行くなら今しかないと思わぬ形で瑞貴は動き出した。あの石碑が自分を呼んだのだろうか。過去、古の時代から女性は男性の気持ちを抱きしめる為に待っていた。でも今、自分は彼女に背中を押されたのは確かだ。


 今までに自分から大阪に行ったことはないことが、宏樹にはなんと思われていたのかなど考えたこともなかった。本当は自分が会いに来てくれることを待っていたかも。優しさから口にしなかったからではないかと瑞貴は宏樹が大阪へ帰るときの背中を思い出す。


 明日の午前の新幹線をスマホで予約した。なんだか胸の奥がざわざわする。

 ここ数か月どんなに彼の仕事が忙しいのかは分からない、自分の元へ帰らない理由を知りたいがために宏樹に会いたいのだ。それがどんな結果でも、ただの思い違いだったとしても、取っ払ってただ単に一人での毎日に耐えられない。

 宏樹のぬくもりを感じたくて、寄り添いたいと瑞貴は思い走りだした。二週間も急に休暇を取り、元通りに仕事がないかも。辞めてもいいと思う覚悟で布団をかぶった。別の会社でも、どこでも編集の仕事ができればそれでいい、今はあなたに会いたい。

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