第15話 その美少女後輩は彼を憎からず思っている 2
次の日、先輩にミルクティーのお返しをすると「えっ、別にいらんけど」と言われてついムッとして先輩が言ってたよくわからない理論をお見舞いしてやった。
やはり先輩は昨日のミルクティーを借りだとは思っていなかったようだ。
受け取ってもらえて安心してしまい、つい「私みたいな美少女から何かもらえるなんて中々ないんですよ?」なんて口走っていた。
うざがられないか心配になったが、
「自分で言うな自分で。確かに美人だが」
美人だね。なんて今まで何度か言われたことはあった。けれど何故か先輩に言われるとびっくりしてしまって「セクハラですか訴えますよ」とか言ってしまった。
それから毎日私と先輩はここで昼食を摂り、少しずつだけど話すようになった。
あの日、もしかしたら先輩は明日から来ないんじゃないかと何故か一抹の不安を抱えていたが、そんな心配も杞憂だった。
先輩との会話はすごくこう、気持ち良い。いや、変な意味とかじゃ無くて。
一見適当に見える会話でも、小気味よく行き交うので本当に楽しい。
失礼だけど、クラスのみんなみたいに表面上だけの会話じゃないっていうのが伝わってくる。
先輩はとてもめんどくさがり屋で、けれど私が悩んでいると様子とかにはすごく目敏くていつも相談に乗ってくれる。
それがすごく嬉しくて悩みなんて吹き飛んでしまうようだった。
まぁ有り体に言えば浮かれていた。
先輩が彼氏だったらこんな毎日なのかな?なんてバカな妄想をするぐらいには。
◇◇◇
「そういえば先輩。校外学習どこ行くんですか?」
中間テストも終わって、校外学習を来週に迎えたある日、私は何気なく先輩に話を振ってみた。
その時初めて先輩が編入してきたのだと知った。
もしかしてイジメとか……。
なんて変な想像をしてしまった。けれど、
「お前が思ってるようなことはなかったぞ。ちょっと事故にあって高校に通うのが当分難しいってなったから、ちょうど引っ越しすることになってたし2年からの編入に向けて通信制にしたってだけだ」
良かった。そうホッとしたが、学校に通えなくなってしまうレベルの怪我なんて早々するものじゃない。
気になって聞き返したが、先輩の冗談(?)のおかげで私の心配は無くなった。
やっぱり先輩は目敏いなぁ。
そんな先輩の横顔は少しかっこよく見えた。
◇◇◇
「んじゃ、また明日な」
「はい。また明日です」
恒例となった挨拶は、寂しくもあるが少し明日が楽しみになる。
けれど私はここ最近ついつい先延ばしにしていることを実行するつもりでいた。
けれどいきなり実行しようとすると緊張してしまう。だからきっかけがほしい。
「あ、先輩!私からのお土産、楽しみにしてて下さいね!」
「なんだ、蟹でもくれんのか?」
「カニカマでいいですか?」
「カニカマの主原料って最近じゃ蟹じゃなくてスケトウダラっていう魚のすり身らしいぞ」
「えっ、詐欺じゃないですか」
「ま、カニ風味蒲鉾なんだし、ミラノ風ドリアみたいな感じで蟹を感じれればいいんだよ」
「ぷっ、なんですかそれ」
いつもの小気味良い会話のおかげで良い感じに緊張が解れてきた。
よし、言うぞ!
「せ、先輩。その……」
あ、あれ。おかしいな。ただ聞くだけなのに。
「は、はい。なんでしょう」
ほら、先輩も私の緊張が伝わっちゃってる。
「……れ、連絡先!お、教えていただいてもよろしいでしょうか……」
尻すぼみになってしまった私の勇気はちゃんと先輩に伝わったのだろうか。
「あ、あぁ。なんだそんなことか。ほれ」
ただそんな心配は無用だったようで、あろうことか先輩は携帯ごと渡してきた。
「え……。携帯って普通人に渡せるもんなんですか?しかもロックかかってないし……」
これは信用されているのかどうなのか……。
私は悪態を吐きながらも先輩の携帯を操作する。
女の人多くない?
少し腹が立った。私が勇気を出して聞いたというのに……。
そんなのはお門違いだけどね。
ま、今日は連絡先聞けたしオッケーかな?
その後すぐにスキップしそうな自分を押さえつけながら教室へと戻った。
さて、なんて送ろうかな。
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