第14話 旅路
【神国アルディナ 聖堂内深部】
「聞いたか、ここに黒騎士一行が来るらしいぞ」
「あぁ、それにダミアン達が駄目にした筈のエルフのガキも一緒にいるらしい」
彼等の他にも周りに沢山の人物が白の神官、黒の神官と、左右非対称に分かれて座っていた。それは派閥を明らかにしていると同時にその存在意義も現している。
白は聖職者として慈善事業に努め、黒は暗殺などの暗部として働く。それぞれの長が代表して今後の予定を話し合っていた。
「あのガキは人質としても交渉材料にも使えるからな、是非にも欲しい所だ」
黒の神官もそれに同調する。
「如何致しましょうか?」
全員を見下ろせる位置に座っている人物に白の神官は問いかける。
「黒騎士は殺せ。聖女とソファーリアの娘は必ず手中に収めるのだ」
二人の神官を睨みつけるように命令を下す。二人は椅子を降り敬愛する主人を敬うように跪く。
「「はっ、畏まりました!!」」
白と黒の神官が立ち上がり颯爽と部屋を出る。そしてそれぞれが独自に動き始める。白の神官は神の信託として御触れを国中に出した。アルベルト達はその事を知らずアルディナを目指していた。
◇◆◇◆◇
「もう歩けないの」
ぺたりと地面にへたり込んだアリアが子供のように抗議する。まぁ子供なんだが。
「しょうがないなぁー。私がおんぶしてあげる」
「やったのーー!!」
アリアは嬉しそうにクリスタの背中に乗る。おんぶしているクリスタも満更ではなさそうだ。
アリアが駄々をこね、クリスタがよしよしと面倒を見る光景を目撃するのは、山道に入ってから一体何度目になるのだろう。
「山道を歩くのはやっぱり子供にはきつかったかー」
俺の言葉にアリアが可愛く頬を膨らませる。
「アリアは子供じゃないの!」
一応、成人している俺たちでもそれなりにきついのに、まだ幼いアリアはもっと苦しい筈だ。
「ん、そういえばアリアは幾つなんだ?」
そう問うと、アリアは指を折り数え始めた。
「1、2、3……20歳なの!」
「え、20歳?! 俺たちよりも年上なのか?!」
仰天する俺にクリスタがぽんと肩を叩く。
「アル君、エルフと人間では寿命が違うの。だから人間と同じに数える場合は10歳引くのよ」
そういえばそうだった。エルフと人間では時間の感覚が違う。よって成長も遅い。
「って事は10歳ってことか? 良かった、てっきり年上かと思ったぜ」
クリスタもうんうんも頷く。
「10歳はまだ子供なんだよ」
クリスタの言葉にアリアが強く否定する。どうやら大人に見られたい年頃らしい。
「違うの! エルフの森では20歳から大人って言われたの」
諦めず抗議してくるアリアを尻目に俺たちの旅は順調に進んでいた。あと2、3日に着くであろう。空を見上げると日が沈み始めていた。夜に移動するのは危険を伴う。ただでさえ魔王によって魔物達が凶暴化しているのに夜はさらに活動が活性化するかららだ。
「今日はこの辺で野宿するか」
「はーい」
「賛成なの!」
ここ3日でそれぞれの役目を完全に熟知した。俺が木材を集め魔法で火を焚く。クリスタがテントを張り、アリアがそのお手伝いだ。手際良く準備を終え、手頃な岩に腰掛け昼間捕まえた魚を燻る。
「早く食べたいの」
「もうちょっと待ってな」
雑談をしながら魚が中まで焼けるのを待つ。暫くすると良い匂いが漂ってきた。
「ほれ、出来たぞ」
串に刺した魚を渡す。アリアはフーフー、ハフハフと言いながら食べ始める。
「熱いから気を付けろよ」
クリスタをみると思いっきりかぶりつこうとしていた。
「あじゅゅっ! あふあふはふーあふひ」
「お前バカだろ。アリアでさえちゃんと冷ましながら食ってるのに」
「ばひゃじゃないもん。おひゃかすひてたんなからしかたないひゃん!」
口に物を入れながら喋る為、全く聞き取れない。
「あぁもう食べてから話せ」
「そうひゅる」
食事を終えた俺たちはそれぞれ眠りにつく。クリスタとアリアはテントの中に、俺は近くの木にハンモックを設置して眠る。あと一人分入れるくらいのスペースは残っているが、流石に男一人の中、三人で川の字になって眠る勇気はなかった。
(ま、この辺の魔物は俺を恐れて近付いては来ないだろうな)
周囲に生物の気配は全く無く、不気味な程静かだった。
ハンモックにゆらゆらと揺られながら、明るく照らす月を眺めながら眠りについた。
(明日には……つきそうだな)
虫がリンリンと鳴く声と川のせせらぎに身を任せる。俺たちは静かな夜を過ごした。
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