ドラキュラの生家のある街 シギショアラ

 シギショアラは中世の町並みが残る人気の観光地のひとつ。古い町並が佇む石畳の街を歩けば、ファンタジー世界に浸ることができる。


 街のシンボルといえる時計塔は今も動作するからくり時計がある。巨大な時計塔を真下から見上げるとまさに圧巻。

 時計塔の中は博物館になっている。狭い階段を上り、屋上階に到達するとからくり時計の仕掛けがある。時計塔の外周を囲むバルコニーを一周すると街の景色が見渡せる。

 夜はライトアップされ、幻想的な雰囲気を楽しむことができる。


 街のはずれの木製の屋根がついた階段を上ると、山上教会がある。訪問時、たまたま祭壇前の地下への入り口が開いており、隠し部屋を見つけた気分でテンションが上がった。

 地下への階段を降りるとかつては棺を納めていたであろう穴がセメントで塗り込められていた。まるで映画「ナショナルトレジャー」の地下墓地への入り口のようで妙に嬉しくなった。


 周辺は墓地になっており、ホラー映画に登場するようなねじくれた樹木や十字架を象った墓石が並ぶ。魔女が住む森のような木って海外には本当にあるんですよ。


 何と言っても、この街にはドラキュラ公ヴラド・ツェペシュの生家がある。黄色い壁のかわいいらしい家で、現在はレストランとなっている。

 このレストラン、観光ツアーに人気でいつも満席。一度だけ時間をずらして入ることができたが、二度目の訪問では無惨にも断られてしまった。


 レストランの三階は、入場料を取る部屋があった。何があるのか分からず部屋に入ると、ドラキュラ公の胸像や肖像画が置かれ、赤色の照明で照らされている。

 歴史的な展示品でもあるかと思いきや、何もない。


 突然、叫び声が聞こえて部屋の中央に置かれた棺から人が起き上がった。

 なんだこれ、しょうもないお化け屋敷か。小銭稼ぎでこんなお化け屋敷を作るとはなんとも商魂逞しい。したたかなルーマニア人の姿を垣間見た。

 観光地として有名になったことの弊害というべきか、ちょっと寂しい気持ちもした。


 シギショアラはドラキュラが好きなら絶対訪問したい街だ。しかし、一度目の団体ツアーは日程が厳しかったのか行程に含まれていなかった。ツアー催行が危ぶまれて焦った私はとりあえずスーマニアに行けたら良いか!という思いで背に腹変えられずシギショアラ抜きの団体ツアーに参加した。


 シギショアラに行けなかったのが悔やまれ、二度目の個人ツアーでは予定に組み込んだ。しかしここでも悲劇が起きる。なんと市街地が映画の撮影で封鎖されていたのだ。楽しみにしていた時計塔に登ることもできず、街並み見学もできず、まさにほぞをかんだ。

 三度目の正直で時計塔に登れたときには屋上から見渡す景色にひたすら感動した。


 半日もあればまわりきってしまうほどの広さだが、何度でも行きたくなる街だ。今度行くことがあれば、旧市街のホテルに宿泊してみたい。





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