ルーマニアへの道

 本編に入る前にルーマニアへの行き方について書いておこう。一番メジャーなのは飛行機だが、日本からの直行便は残念ながらない。ヨーロッパや周辺の大きな空港での乗り継ぎとなる。海外旅行慣れしている方なら陸路も考えるといいかもしれない。

 ヨーロッパは列車が発達しているイメージがあるので、ハンガリーなど近隣の国から列車で入国するのもロマンチックだろう。ぜひ一度列車でのヨーロッパの旅を経験してみたい。


 最初の旅は団体ツアーでブルガリアとの抱き合わせという行程だった。もう何年も前になるので記憶が薄れてしまったが、ブルガリアから陸路バスで入国した。陸路で越境するのは初めてでとても新鮮だった。バスで高速道路の料金所のようなところまで行き、パスポートチェックのために待機する。パスポートのチェック方法を忘れてしまった・・・でも席に座ったままパスポートはガイドさんが回収してまとめてスタンプをもらってくれたと思う。


 私はそのときが初めてのルーマニア入国だったので、スタンプをしっかり押して欲しいと頼んだ。戻ってきたパスポートを見れば、薄い・・・まあこんなもんかという感じだった。全員分のチェックが終わり、憧れのルーマニアへ。

 ブルガリア側から橋を渡る途中にウェルカムルーマニアみたいな横断幕が張ってあった。その下をくぐった時の心境はよく覚えている。心臓が高鳴った。そして全身に鳥肌が立った。頭に血が上って大興奮だった。


 それからブカレストへ田舎道をひた走った。バスの車窓からの景色にずっと感動していた。広い畑がどこまでも続き、素朴な民家が並ぶ田舎道、夕陽が大地を照らしてとても美しかった。ドラキュラ公が駆けた地にやって来たのだと実感した。海外旅行の経験は少ないが、陸路での国境越えはこれが初めてだったので良い思い出になっている。

 ちなみに帰路はブカレストのヘンリ・コリアンダ(オトペニ)空港からトルコ航空。空港で現地ガイドと記念撮影をしていたら、職員に止められた。空港での撮影はNGだったらしい。ガイドが横目でしまった、という顔をしたおかしな写真が残っている。イスタンブールの空港を経由して関西国際空港へ戻ってきた。ルーマニアからトルコへ、なんとも味わい深い旅程だった。


 二度目の旅は飛行機を利用した。自分で史跡巡りの予定を組んだので、訪問する国はルーマニアだけ。このときは日本の旅行代理店で航空券を予約してもらった。飛行機のチケットを自分で予約するのにちょっと不安があったのでお任せした。このときは関西国際空港からKLMオランダ航空でアムステルダム経由約12時間。それを知ったとき、オランダにも行きたいじゃないか・・・!と思ったものだ。

 アムステルダムは比較的スムーズな乗り継ぎのため、空港の外に出るほどの時間は無かった。滑走路に降りるときに地上に風車やチューリップ畑が見えたのでオランダだ!と実感できた。

 

 乗り継ぎは初めてのためすべてが不安で、代理店に何度もスーツケースは受け取らなくてもルーマニアまで届くのか?と聞いたのを覚えている。3時間弱でアムステルダムからヘンリ・コリアンダ空港へ。このとき深夜に到着する便だったので、ドライバーがちゃんと迎えに来てくれるのかも心配だった。ヘンリ・コリアンダ空港は日本の地方の空港くらいの規模。これが国で一番大きな空港なのか、と思ってしまう。陸路が発達しているので空港はショボいのだろうか。出口を出ると、ちゃんと名前を書いたA4くらいの紙を持ったおじさんが立っており、心から安堵した。


 帰路も同じ経路だった。飛行機で隣になった奥さんがアメリカ在住のセレブで、私が1人でルーマニアに行ったことをよくやるわね、と心配していた。ルーマニアという国は今でも得体の知れない、ミステリアスな雰囲気を残しているのかもしれない。


 三度目の旅も飛行機を利用した。地元空港から無理矢理行くルートを考えて、地元―羽田―成田―ヘンリ・コリアンダ空港―羽田―地元というルートだった。今回はエクスペディアで個人的に予約をした。大きな国際空港は関空の方が近いのだが、台風による橋崩壊と滑走路水没で一度旅程がパアになったのだ。これには泣いた。本当にここ最近の天災は半端ないと思う。

 大きな旅行の予定が狂ったことがこれまで無かったので落胆も激しかった。空港の再開を待ちわびたが、全然ダメ。そういうわけで日程をずらして関東から飛ぶとこにした。


 成田からカタール航空11時間半のフライトでドーハ経由、5時間半かけてヘンリ・コリアンダ空港へ。この便はドーハにド早朝着、ルーマニアには昼過ぎに到着できる。今回は、前回依頼した日本の旅行代理店へメールをしたがなしのつぶて。

 ネットで現地ガイドを探していたら前回現地でお世話をしてくれた方のブログを発見、直接交渉でドライバーを依頼した。代金の支払いは現金で、というので結構な金額のユーロを持参したのでかなりドキドキした。ちゃんと領収書をもらえてトラブルは無かった。


 帰りの便はかなり過酷で、ルーマニアからドーハに夕方着、早朝6時頃の便で羽田へ、とう空港で寝泊まりプランだった。この不便さで航空券が安かったのだと思われる。ドーハでの数時間、どう過ごせるか調べてみるとトランジット客用にシティツアーというのを見つけた。2~3時間のバスツアーでまさに暇つぶしに最適。時間があればバスで砂漠を走るツアーもあるようだ。

 今回は夜なのでシティツアーに参加することにした。代金は1人約2000円程度。英語ガイドがついてバスに乗り込み、夜景のきれいな観光スポットを3~4カ所回ってくれる。正直長旅で疲れて半分眠りこけていたが、オイルマネーで豊かになったドーハの市街地はとてもきれいで見応えがあった。


 ツアーから帰るとあとは仮眠をする。ドーハは空港内に仮眠スペースがあり、簡単なリクライニングチェアで横になれる。空港内の数カ所にそのようなスペースがあるので、席が確保できないということは無さそうだった。男女別スペースもあるので安心だ。

 しかし、枕が変わってもそこそこ眠れる私だが、ベッドではないのでなかなか寝付けず朝を迎えてしまった。航空券を予約するときは乗り継ぎのことをよく考えて決めた方がいい。


 ルーマニアは東よりではあるがヨーロッパ圏で、やはり行くまでに時間もお金もかかる。それでもまた行きたいと思える、不思議な魅力のある国だ。日本からの直行便は需要が無さそうなのでできそうにはないが、今の2倍くらいのスピードで飛べる飛行機でも開発されないだろうか、とぼんやり考えている。

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