第7話

彼の答えに、また言葉を失ってしまう。来月?しかも、北海道。ここからは飛行機でしか行けない。高校生の私には、こんな田舎からは、とんでもなく遠い距離に感じた。


「親父の仕事の都合でさ。参っちゃうよな~。」


そう言って彼は何てことなさそうにははっ、と笑う。


頭の中がぐちゃぐちゃで、何も言う事が出来ず俯いてしまう。胸が張り裂けそうに痛んで、色んな感情が入り混じってもう訳が分からない。


そうだ、そうじゃないか。

彼にとって私はその程度の存在なのだ。昔からそう、分かっていた事じゃないか。


「・・・そっか。」


何とか絞り出した相槌に、

橋本くんはそうなんだよ、と笑う。


「だからさ・・・。」

「ねえ、もう一緒に帰るのやめよう。」

「・・・え?」


これ以上話を聞きたくなくて、彼の言葉を遮った。

突然の私の言葉に彼は驚いた顔をして、橋本?と、私の名前を呼ぶ。


「どうしたの、急に。」

「別に。前から言おうと思ってたの。」


途中から彼の顔を見る事は出来なくなっていた。

俯いたままそう言って、彼から背を向ける。


「ちょっ・・・なんだよ急に!」


後ろから彼の戸惑ったような声が聞こえてきて、けれど振り向かないで歩き始める。分かっていた事だ。私たちはただの友達だ、別に笑って離れる事が出来るのだ。そんなこと、昔から知っている。


だから泣くな、私。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る