第3話

「離婚か・・・。ごめん、俺全然知らなくて。」

「知らなくて当然だもん。気にしないで。」


放課後、田んぼ道を2人並んで歩く。


申し訳なさそうにする彼にそう言えば、ごめん、ともう一度謝って。


「・・・ほんとに、久しぶりだね。」

「だな。元気だった?」


その言葉に曖昧に笑って頷く。そのまましばらく何も会話はせず歩き続けた。不思議と、気まずくはなかった。




私と橋本くんは、小学校の同級生だった。


人数が少なく各学年1クラスしかない私たちの小学校には当然クラス替えも存在しなくて、全校生徒の名前が言えるくらいだった。


同じ名字だった私達は、生徒だけでなく先生にもよくからかわれた。

最初はからかわれるのが嫌で、橋本くんとはろくに会話もしなかった。けれど気づいたら仲良くなっていて。


紛らわしいため周りは私達のことを下の名前で読んで区別したが、私と橋本くんはお互いの事を名字で呼びあっていた。


「もう、4年も前の事なんだな~。」


橋本くんが懐かしそうに笑って、私も頷く。


橋本くんは中学に上がる前にこの町から引っ越し、

それから連絡を取ることは1度も無かった。単純に連絡先を知らなかったのだ。東京に引っ越した、そんな情報しか私は知らなかった。



沈みかけている太陽が、正面から私たちを照らす。

吹いている風が生温くて、なんとなく息苦しく感じた。


いや、これは風のせいではないか。



「これから、またよろしくな。」

「・・・うん、よろしくね。」


彼の笑顔が眩しくて、

少し、泣きそうになった。

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